記憶のミーコ

まさまさ

第1話 猫の思い出

 僕が三歳ぐらいの頃。我が家には『ミーコ』と呼ばれるキジトラの猫が居た。元々野良猫だったのを、祖母が拾ったらしい。


 今は別の家で暮らしているが、昔は山の麓の小さな家で祖父母と両親と暮らしていた。ミーコはその時に居た猫だ。


 飼い猫だが放し飼いされており、しょっちゅう外に出てはどこかへ姿を消し、腹が減ったり寒くなったりすると家に戻って来るのだ。


 とてもかわいい猫だった。目は大きく、鼻筋はしゅっとしていて、甘えん坊。鳴き声も猫らしくにゃあにゃあと鳴き、部屋の中を走り回っていた。


 ある日、庭でけたたましい鳴き声が響いた。どうやら別の野良猫と喧嘩したらしい。ミーコは左耳に丸い穴を空けて帰って来た。噛み付かれたのか引っ掛かれたのか分からないが、虫食いの落ち葉の様だった。


 台所の前でよく鼻と鼻をごっつんこさせていた。優しい猫だった。


 今でも思い出す、可愛かったミーコの記憶。僕の人生で初めて身近な存在の猫だった。


 ただ、この記憶には問題が一つある。


 それは、ミーコが生きていた頃、僕はまだ産まれてなかったということだ。

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