4 イケメン発見?!

恐怖を体験した蒼法は、見たものをすべて忘れて部屋に戻る。

(はぁ〜。なんなんだ?この学校は…)

校則がないから自由に入れるのか?


「顔、真っ青だ。どうした?」

「紅守さ〜ん、聞いてくださいよぉ〜…」


部屋に帰ったら紅守が茶を入れてくれる。

遅い時間だというのに、待っていてくれたのだろうか、それとも、起こしてしまったのだろうか。


「待ってた。お前になんて名前を呼べばいいかな、なんて考えてたら寝れなくて…」

「紅守さん…」


優しいウソ。

紅守は眠たそうにしている。

不安で、寝たくても寝れなかったのだろう。


「君には感謝する。僕は蒼法だから、蒼法って呼んでもらえたら嬉しいかも。それから、僕も紅守って読んでいい?」

「もちろん。紅守って呼んでください。私は蒼法って呼びますね。えっと…次は…敬語!敬語を外してもいいですか?」

「は?」

「駄目っ…でしょうか…」


紅守が沈む。

同室に敬語を使いなんてバカじゃないの?、と思った。


「敬語、僕も苦手だし別にいいよ。お互い、ライバルとしてよろしくね」

「はい!…じゃなくてうん!」


やっと、友達になれたような気がした。


「なんで待ってくれてた?」


待ってくれていた2の理由が知りたい。

絶対、他にも理由があるはずだから。

でなれば待たないだろう。


「実家から手紙が来た…」

「手紙?実家というと、紅家かな?」

「うん。ただの手紙だったらいいんだけど…特別な手紙で」

「誰かに見られたらマズい?」

「マズくはない。密通ではないから」

「じゃあなんの手紙?」

「同室に見せろって、母と父が」


紅守が言った途端、ビュー、と強い風が吹き、窓が壊れそうになった。


「警告の手紙らしい」

「警告?」

「うん。両親からの手紙には、もうすぐ学院に何者かが侵入するだろうって」

「侵入?何者かが…?えっ…?紅守。なんでご両親は知ってるの?学院の情報…」

「まあ…私の安全を確保するために、何者かを送り込んだんでしょう。過保護にも程があるよね…」

「そうだね」


穏やかな声で蒼法が言う。

それに続けて、気をつけて、と紅守が言ってくれた。

己の身を案じてくれる人がいるということは、ありがたいことだ。

これからも紅守を大事にしよう。ーそう思えた。



◆◆◆


自分の許婚いいなずけより、学院の生徒の方がイケメンとは驚きだ。

それに家の人間より話が合う。

本当に、抜け出してよかった。

そう思いつつ、今夜は寝た。



入学して最初に行われる授業は詩賦の授業だ。

詩経しきょうの中から出題される問題を、自分のペースで解いていく。


さらさらと解いていく様に驚き、周りの生徒は紅守をじっと見る。


紅監生こうかんせい。書いた詩を、みなに見せていただくことはできますか?」


監生は飛法院の学生のこと。


自分かと思わなかった紅守は、慌てて立ち上がる。


「素晴らしい出来ですね。このままいけば、状元も確実。ー頑張るのですよ」

「はい!ありがとうございます」


歴信の方を向き、ガッツポーズをした。

歴信はそれに気づき、にこりと笑ってくれる。


「それでは続きをー」


1刻ほどで終わり、また次の授業へと続く。

次は法術の授業だ。

今回は水の術を使うらしい。



法術の授業が終わり、暑いので手で顔をあおいでいると、とある監生と目が合う。

(あれは確か…李縁りえん先輩…)

李縁はこの学院の中で1番イケメンとされ、ヒロインである自分とはオニアイ。

なんて考えていると、李縁がにこりと笑いかけてくれる。

なんと…


「李縁先輩…。ーイケメンッッ!!」


つい口に出してしまったようだ。


「蒼法ぉ…」


蒼法が凄い顔で見てくる。


「お前、その調子で大丈夫か?」


蒼法はふたりのときは柔らかい声を出し、みなでいるときは凛々しい声を出す。

こんなイケメンもタイプだ。

(許婚よりイケメンな人ばかりだわ…)


「李縁先輩はイケメンだが、中身はグロい」


蒼法が説明してくれる。

(グロテスク、ということ?ありっ!)

紅守はまた、変な妄想を始めた。


「李縁先輩は反皇太子派のリーダ的な役割をしてる李家。李家は中でも過激派な一族で、先代の皇帝陛下も苦労しておられた、と聞く」

「そんなっ…」

「イケメンでも、中身はグロい奴もいるから気をつけろ…って紅守っ?!」


(いてもたってもいられない。そんな噂を聞いたら、私だって行きたくなっちゃうわ!)

つい紅守が出ようとしていることを、紅守はー林朱は気づいていなかった。

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