3 事件のよ・か・ん?
「新入生の代表は、誰がなるんだろうな」
「新入生の代表?」
蒼法は部屋に着き、荷物を出していると、このようなことを言い始める。
新入生の代表…たしか、
会議というのは要注意人物の表ーすなわち、ブラックリストに載ってしまった人物を飛法院から追い出すための会議だと蒼法が教えてくれる。
「ブラックリストに載ってしまった人物は、たこの
「なっ…」
「反論しても無駄だ、これが事実。お前は箱入り娘じゃあるまいし、これくらい知ってると思ったが、…チッ。…見損なったぞ」
(あれっ?蒼法さん、私から目を逸らした?)
舌打ちをする前、自分から目を逸らした。
誰かいたのだろうか。
まあどうでもいい。そんなの考えたところで、どうにかなることでもないしー
でも、ちょっとだけ悲しかったような気がした。
「ふん、じゃあ新入生代表の発表に向かうぞ」
「はい」
◆◆◆
紅守とふたりで、新入生代表が発表される会場に向かった。
(こいつ…ただならない気配を持ってやがる。確か、今年の飛法院に入る前の試験の状元だったんだよな?)
心の声で、紅守には気をつけろ、と自分に言い聞かせる。
「すまないねぇ。では、ここで私の名前と新入生代表を発表する。まず、私の名前は
ゆっくりと喋る。
学院の卒業生である兄が教えてくれた。
1、2、3、4年生の代表は1番成績がいい。それから、
となるとー
「紅守」
紅守の名が呼ばれ、紅守は
「はい!」
「そなたを新入生代表に命じる。はぁ。この学院は面倒なことばかりだが、そなたが新入生をまとめていくように。…期待しているぞ!」
「学院長のご期待に添えるよう、精進して参ります」
紅守が左手に拳をつくり、拳の上に真っ直ぐ右手を置く姿勢をとる。
すると学院長は満足そうにふぉっ、ふぉっ、ふおっ、と
「それでは下がるがよい」
「はい」
疲れきって帰ってきた紅守に、お疲れさま、と労いの言葉をかける。
「ありがとう」
ふんわりとした笑顔は皇帝の妻、
(こいつ…女…?だよな…。なんで女が…。いや、たまにいるよなぁ。女っぽい男。…そういうことに…しとくか…)
と、頭の中で割り切った。
蒼法は暗闇の中、図書室に行こうと廊下を歩く。
真っ暗な学院は、どこか薄着味悪かった。
(コワッ!!)
出歩くんじゃなかったー
「ひっ!」
ガサガサと何かが揺れる。
この学院に消灯時間がないのが悪い。
生徒にこんな思いをさせるなんて。
ちょっとだけ、飛法院を恨む。
(怖いっ…)
「誰っ…猫か…。猫ごときに怯えるとは、僕もまだまだだな」
にこりと笑い、廊下を進む。
幻術というものも存在するこの国では、猫1匹安心できない。
(そこが術の弱点、といったとこか…)
術は人を助け、守ることもできる。
一方で、こうやって人々を脅かすこともできる。
人次第で法術は違ってしまう。
そこがどうも納得できない蒼法は、僕にできることはないかと、この学院にきた。
僕みたいな無能な人間に何ができるかわからないが、できるだけやってみよう。
(えっと…とありあえず、詩の本でも読んどくか)
飛法院では法力の他、
それに合格すると、晴れて皇帝の元で働ける。
元、といっても最初は研究生的なことをするのだが。
飛法院の他、これと同じ内容の学力だけを競う学校もある。が、蒼法は法力が強かったので、飛法院に入った。
親しかった友だちがそちらに入ってしまったので寂しくなったが、紅守という友だち?
ができたことで寂しさは消えた。
「なんでそんなことを?!騙せばあなたは捕まる。あなたは学校の先生!生徒たちを脅してはいけないわ!それに、…」
女の声がする。
学校に女はいない。
いるとすれば、先生くらいだ。
「見つかったら殺される…」
(殺されるっっ?!!)
聞いてはいけない、聞けば、必ず自分が殺される。
事件の予感がした蒼法は、足音を立てないようにしながらその場をさる。
危な、かったー
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