第3話

「おはよう、イロハ!起きてー!ネモちゃんとクレマちゃんが迎えに来てるわよ!今日は一緒に内職する約束したんでしょ!」

お母さんの大声で起こされた私は、もぞもぞと布団から抜け出す。昨夜はこんなにぼろっちい家なんだしお風呂も布団も何もないだろうと思って覚悟していたら、ちゃんとあったかいシャワーが使えた。汲んできた水をお母さんが暖炉であったためてくれたのだ。しかも布団もちゃんとあった。楓、私この家で暮らしていけそうだよ!

「ふぁぁぁ、母さん、楓は?」

あ、やばい、どうしよ。

「かえで?って誰?」

えーーーっと、これはあれだ!何言ってんの作戦だ!

「え?お母さん何言ってんの?私メープルって言ったんだよ?」

さあ、どうくる?

「あ、そうだったの。なんでメープルがかえでに聞こえるんでしょうねぇ。少し休まないと。ほらイロハ、早く着替えて行っておいで!」

ねえ、イロハ。あんたのお母さん、最高だね!

「はあい、行ってきまーす!」

外に出ると、ネモとクレマが待っていた。

「おはよう、ネモ、クレマ!ねえ、メープルは?」

「おはよう、イロハ!メープルは、えっと、その、なんというか。。」

どうしたんだろう?

「おはよう、イロハ。メープルは寝坊よ。」

クレマがネモの後を引き継ぐ。寝坊って、、、まあ楓って寝坊癖あるしね。

「私起こしてくるよ。ネモとクレマはここで待ってて。」

ネモとクレマがついてくると、いろいろ面倒なことになりそうだし。

「え、大丈夫、、?イロハだけで大丈夫?」

なんとまあ、クレマに素晴らしく心配されている。イロハってそんなやばいやつだったのか。。。

「大丈夫大丈夫!行ってきまーす!」

そう言って道を行く。、、、あ、メープルの家の道、知らなかったわ。

「ちょっとイロハ!真反対の方向に行くんじゃない!やっぱりついていくよ!」

うん、その方が私も迷子にならなくて良さそうだよ。

「はい、ここがメープルの家。そんなに遠くないでしょ?早く覚えてね!」

確かにそこまで遠いわけじゃあないね。

「じゃあ行ってくるー!」

そう言って、メープルの家の扉をどんどん叩く。返事がない。

「入っちゃうよー?いいよねー?」

そう言って、扉をぎしぎし音を立てさせながら開く。そしていろいろな部屋を覗いてみる。あ、あった。ここだね!ネモとクレマに聞こえない用にこっそりと喋りかける。

「楓、楓!ネモとクレマが待ってる!紅葉だよ!」

ううーん、むにゃむにゃ、と楓が言う。くっそ、しぶといなぁ。

「メーーーーーープーーーーーールーーーーーーー!!!!!」

叫ぶと、ビクッ、と布団の山が動いた。

「うわあっ、今なんだか怖い夢見ちゃったよ!メープルって叫ばれる夢!怖い怖い怖あああい!」

私が言ったんです!夢じゃないよっ!

「私が言ったの!さっさと起きて!」

眠そうな楓を叩き起こして、着替えをさせる。赤ん坊かよ!

「あ、出てきた。おはようメープル!」

ネモが元気よく挨拶する。

「ネモ、クレマ、おはよう!」

てか今日は何やるんだろう?

「今日は何やるのー?」

私が言うより先に、楓がネモとクレマに聞いた。

「え?今日はお仕事の日でしょ?あ、イロハ、お仕事のカゴ持ってくるの忘れてない?」

お仕事のかご?あ、確かにネモとクレマは腕にかごを下げてる。

「忘れちゃった!今ちょっと取ってくる!」

急いで戻ろうとすると、楓が私の腕を引いた。

「私もついていくよ!ネモとクレマは待ってて!」

あ、ついてきてくれるんだ。

「うん。じゃあそこの木の下でお仕事やって待ってるね!」

クレマがそう言って木の下に座り込んだ。

「はーい、じゃあ行ってきまーす!」

そう言って、来た道を戻って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

紅葉になる前に たけのこの子 @kinokonoko03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画