第38話 マナ枯れ休養

 裏の畑の小屋ダンジョンで、足踏み脱穀機でスライムの核を乱獲した日の翌朝――



「やべえ、身体がだるい」


 今日はザワさんたち『暴熊』の磐城ダンジョンアタックへ参加する予定なのだが、なんだかとっても体調がよろしくない。


 休もうかなとも思ったが、退院してからの復帰第一回目となる今日のアタックにはなんとしてでも参加したい。


 これまで迷惑をかけてしまったという後ろめたい思いもある。


 なので、重い体を原チャリに乗せて磐城ロッジに向かった。



◇ ◇ ◇ ◇


 

「あいせー。おめえ、昨日裏の畑のダンジョン入ったべ」


 到着早々、ザワさんからのご指摘。



「イヤ、ソンナコトナイッスヨ」


「うそこげ。そんたら顔色して。いいが、ダンジョン潜ればマナ減るんだで? 減ったマナは2~3日休まねば回復しねんだって。して、おめのツラはマナが回復してねえツラだ。今日は休め。」



「えー、でも、最近参加できてなかったし、久々の復帰だしーー」


「いいがら休めって。逆に足手まどいだ。」



「うー」



 そんなやり取り取りを見て、ザワさんの奥さんである佳子さんが声を掛けてくれる。


「あいせー、多分だけど、昨日ダンジョン潜った後は疲れとか感じてなかったんじゃない?」


「あっはい」



「やっぱね。それで、マナに覚醒したのも昨日でしょ?」


「そのとおりでふ」



「あはは、典型的なビギナーズ・ハイだね。」


「びぎなーずはい?」



「うん、初めてマナに覚醒したときはね、身体が興奮状態になって、アドレナリン的なものがどばーって出るんだって。だから、その日は疲れなんて感じなくて、むしろテンションがおかしい感じに上がっちゃってリミッター外れるのよ。」


「ふむふむ」



「だからね、その日は何ともなくてケロッとしてるけど、翌日になるとその反動がどっと出るのよ。まさに今のあいせーみたいにね!」


「はあ」



「だから、今日は帰って寝なさい。くれぐれも家のダンジョン潜っちゃだめよ? 今日含めて最低2日は休みなさいな。」


「わかりました」



 佳子さんにも説得され、オレは素直に家に帰ることにした。



「あーもう、こうならないように藍星のキルカウント調整してマナ覚醒のコントロールしようとしてたんだがな」


「若者の情熱って暴走するんだねえ。興味深い。」


「藍星いないと荷物持ちが俺になるんだが?」


 オレを見送るメンバーたちは、どこか生暖かい目でオレのことを見ていたような気がする。

 


◇ ◇ ◇ ◇


「ただいまーー」


「あれ? お兄ちゃんどうしたの?」


 リビングでは、星華が勉強道具を広げていた。



「なんか、マナ切れだから休めって言われた」


「顔色悪いもんね。」



「やっぱり?」


「うん」



「寝るわ」


「おやすみー。」



 星華と軽く会話して自分の部屋に入る。


 宣言通り寝ようとしたが、いくら体調が悪いとはいえそんなにすぐにも眠れない。


 つまりはヒマで、手持ち無沙汰なのだ。



 ふと、個人用携帯端末を手に取ってみる。


 普段はろくに触ることもないが、ヒマなのでニュースサイトなんかを流し見する。




『富士山ダンジョン24層完全攻略なる! 国防軍のエースが大活躍!!』


 探索者関連のカテゴリにそんな見出しが躍っていた。



 それは、今の我が国においての最高到達階数が更新されたという記事であり、現在最も深いと推測されている富士山ダンジョンの踏破階数が更新されたんだとか。


 ちなみに、全世界においてキラウエア火山ダンジョンの28階層が最高到達とされており、次いでクラスノダール地方ダンジョンの26階層となっている。


 そしてそこには我が国のエース探索者の情報も。



 そのエースは国防軍所属であり、厳密には探索者とは言えない。


 だが、この時代、ダンジョンを攻略するものの総称として『探索者』という呼ばれ方をしているので間違いでもない。


 そのエースの名前は、真坂瀬奈(まさか せな)23歳。年若い女性である。


 なんでも彼女は探索軍3曹時代、いち隊員としてダンジョンアタックに従軍中に倒した魔物からスキルオーブがドロップし、魔法を扱えるようになったとのこと。


 それですさまじい戦闘力を発揮するようになり、今では2尉という地位まで昇進し、我が国のダンジョン探索の第一人者になった。


 その容姿も優れていることから、まるでアイドルのような扱いを受け、各メディアへの露出も多い。


 国防軍からすれば、とても良い宣伝塔と言ったとこだろう。



 そして、下世話なメディアは彼女の交友関係にも邪推の手を伸ばす。


 とあるイケメン探索者グループのリーダーと親し気に会話している画像がピックアップされ、『交際か?』などと勝手な憶測を活字にしていた。


 まあ、有名税とでもいうのだろうか。ゴシップとはそんなものなのかもしれない。


 それにしても恋愛か。



 普段は使わない携帯端末を見ていたせいだろうか。


 それまで全く興味も関心もなかった『疑似的マッチングアプリ』のことをふと思いだしてしまうのだった。



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