第29話 りおのお城

翌日、りおが「今日は何するの?」と朝から楽しそうに話しかけてきた。


「そうだね、一緒に公園に行こうか。」


その提案に、りおは「やった!」と飛び跳ねた。


公園では、二人で砂場遊びをしたり、滑り台を滑ったりして過ごした。


「お城、できた!壊れないといいね!」


りおのその言葉が、あゆみの胸に深く響いた。


りおは無邪気に「壊れないといいね」と言っただけだろう。


しかし、あゆみにはその言葉が、まるで「この家族が壊れないように」と願う強い思いを込めているように聞こえた。


あゆみは砂のお城を見つめながら、しばらく無言で手を動かしていた。


りおが笑顔で「ここにお花を描いて!」と言ってきたとき、あゆみは優しく「うん」と答えたが、その心の中では、まだ家族が壊れてしまうのではないかという恐れが残っていた。


「この家族が壊れてしまうのではないか。私がここにいてもいいのだろうか。もし、私がいなくても、この家族は成り立つのだろうか?」


ふと、手を止めたあゆみは砂のお城をじっと見つめた。手のひらの中の砂は、簡単に崩れてしまうことを知っている。


しかし、その砂の粒一つ一つが、まるで家族を象徴するように感じられた。どんなに不安定で崩れやすくても、一つ一つの手間をかけて積み上げ、また作り直していける。それが家族であり、これからの自分たちだという気がした。


りおが目を輝かせて言った。


「このお城、壊れたらまた作ろうね!壊れても、また作ればいいんだから!」


その言葉に、あゆみは心から微笑んだ。「また作ればいい」という、りおの素直な希望が、あゆみの中で大きな意味を持つように感じられた。


もし家族の形が崩れそうになっても、また新しいものを作り、強くなっていける。そう思うと、あゆみの胸に希望の光が灯った。


あゆみは手を休め、りおが言った通り、砂のお城の崩れた部分を一緒に直した。


そのとき、あゆみは心の中でふと思った。


「家族が壊れてしまうかもしれない。でも、もし崩れたとしても、もう一度作り直せばいい。それが家族なんだ。」


その瞬間、あゆみは深く息を吸い込み、心を落ち着けた。


「私はこの家族に必要とされている。」


その実感が、あゆみの中にしっかりと根付いた。


りおが言った。


「お城、完成!もう壊れないよね!」


「うん、壊れないよ。」


その言葉には、「壊れてもまた作り直す」というあゆみの覚悟が込められていた。

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