第6話 百合は儚いのか……

 例えば『死』と言う単語があるとする。


 夏美の父親は簡単に交通事故で死んだ。


 私も明日、死ぬかもしれない。


 そんな事を考えながら午後の授業を受ける。私は本当の恋愛をして『死』が怖くなったのだ。


 そして、夏美が死ぬのも怖くなった。


 サッカーで挫折して日々衰えていくのが感じられた。遠方のクラブチームに所属すればいいと言えるが、ここで父親の死が重く響いている。


 そう、お春さんだけの家庭では難しいのだ。何より、夏美は解散した所属クラブチームを愛していた。苦楽を共にした仲間が居て、その時間はかけがえのない存在であったらしい。


 不意に教室内を見回すと夏美が寝ている。いや、眠ろうと努力している様に見えた。過度の不眠で授業中くらい寝かせてと訴えているのだ。


 それから、放課後になり。


 華道部の部室にて、私の膝上で眠る夏美は幸せそうである。それは華道部の部室は小さな和室で誰も居ない部室の中で二人きりであった。


 もう直ぐ、完全下校時間である。


 昼休みの時の様にバタバタしたくない。私は夏美を起こすと……。


「ばか……」

「何で、ばかなの?」

「秘密だよ」


 それは私がこの世の終わりの様な表情でいたらしい。これから、私達の恋愛は終わらずに続くはずが、どうしても失う怖さが先行してしまうからだ。


 そう、私は女子同士の恋愛の儚さがどうしても感じられた。


 その後、昇降口から駐輪場に向かい帰路に着く。華道部の部室で少し寝た夏美は何とか帰れそうだ。


「コンビニに寄って行って、コーヒー飲んでもいい?」


 夏美が甘えた声で頼んでくる。


「ダメ、また、眠れなくなっちゃうよ」

「ケチ」


 夏美は口をとがらせると自転車に乗り走りだす。


「あ、待ってよ」

「嫌だ、コンビニに寄る」


 ホント、やれやれだ。

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