第4話 カフェで間接キス
夏美は結局、華道部に入った。私は化学研究部に入部する事にした。
それから、自転車で帰路につくのであった。団地は丘の上にあり自転車での帰り道は難儀するのであった。
ふ~う、限界集落に住んでいた私は母親の軽自動車で分校まで通っていた。まさか、東京で自転車に乗って苦労するとは思ってもいなかった。
「ねえ、東京観光しない?」
私は夏美に甘えてみる。限界集落には山しかない。そこでオシャレなカフェで甘い物でも食べたいのだ。
「近場で良ければ週末に行ってもいいわよ」
夏美は信号待ちのタイミングでスマホを取り出して近くのカフェの検索をかける。
「ここが良さそうだわ」
私にカフェの情報を見せてどうするか聞いてくる。勿論、即答で行きたいと答える。
休日、私と夏美はカフェに来ていた。明るい店内は空気を吸うだけで気持ちがワクワクする。
朝早かったせいか客はまばらで得をした気分だ。
う~ん、これが東京のカフェか……。
私はまったりモードでメニュー表を見る。
「カフェオレとパンケーキが食べたい」
「私は、シナモンロールとブレンドコーヒー」
二人の注文が決まると店員さんを呼ぶ。私の頼んだカフェオレは直ぐに届く。これはパンケーキは時間がかかりそうだぞ。
夏美の頼んだシナモンロールは作り置きらしくブレンドコーヒーと同時に渡された。
パンケーキは最初から焼くのか……。
ここは一つ、工夫してみる事にした。
「夏美は優しいからパンケーキが届くまで我慢できるよね?」
「え?えぇ?」
戸惑う夏美に私は自分のリップを渡す。
「このリップで我慢しなさい」
「は、はい」
ほのかに頬を赤らめる夏美は私のリップを口元に持って行く。
勝った、ホント、夏美は素直な恋人だ。
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