第2話 挫折を癒せるなら
翌朝、私は日の出前に目が覚めた。
不意にカーテンを開けると団地の隙間から茜色の朝焼けが目の前に広がっていた。
綺麗……これが東京の朝なの……。
私はベランダに出ると夏美の人影が見える。そう、夏美の部屋とはベランダで繋がっているのだ。
私は興味本位から夏美の部屋の中に入る。
「美鈴は挫折や絶望を感じた事はある?」
ベランダから入って来た私に夏美は不機嫌そうに質問をしてくる。
突然の来客だ、不機嫌になっても仕方ないと諦める。
確か父親が交通事故で死んで、離婚した母親のお春さんに引き取られたのだ。同情してもいい境遇ではある。
「その顔、勘違いしているね。私は金銭の理由で父親に引き取られたの。でも、本当に辛いい事は人生をかけてきたサッカーが出来なくなったことよ」
「女子サッカー?」
「そう、女子サッカー、この街にあったクラブチームが少子化で解散したの」
女子サッカーはかなりマイナーなスポーツだ。
それこそ、父親が交通事故で死んだのだ、金銭の問題もある。
……。
元気な私は何処に行った!!!
渋い表情の夏美に対して私はスマホのカメラ機能をぶつける。
『カシャ』
「ああああ、無断撮影禁止」
「えへ、もう遅い」
夏美は砕けた表情に変わり、その明るさを取り戻す。
「えへへへへ、もう一枚」
「だから、止めてよ」
都会で育った元サッカー女子と限界集落で育ったコスプレ少女の恋愛の始まりであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます