第2話
翌日——
「貴様の破壊力が優れているのはよくわかった。だが防御面はどうかな! よって軍に使用されている魔導砲台を持ってきた! この砲撃を耐えて見るが良い!」
普通に耐えられた。
「ほ、ほほう……! この俺と同程度の防御力はあるらしい……それならば今度はスピードだ! あの木まで身体能力強化魔法でどちらが先に触れるか競走といこう!」
普通に越された。
「な、なんだと……! な、ならば——」
ダイヤは思いつく限り様々な魔法比べを実施していった。
魔法の精度、射程距離、範囲、使用できる属性の数……etc.
数日間、あれやこれや手を尽くした結果——
「ま、まさか1勝もできなかったとは……」
現時点での最後となる魔法学のテストの成績でも100対120で勝利されてしまったのだ。ダイヤはその結果に昼食も手につくことなく項垂れてしまっていた。
「というか何故100点満点のテストで120点を取られてしまうのですか……」
「知らん……どうにも古代文明でしか見られない解き方で先生殿が感心したためだという」
「なんですかそれ」
エトアは項垂れる主人を見ながらも食事の手を止めることは無い。カロリーを気にせずハンバーガーを食べていることからそれなりに自分本位なのである。
「クソ……もう手は尽くしたぞ……魔法では奴に勝てないというのか……?」
「魔法なしで戦えばよいのでは?」
「それはダメだ。奴は魔法の腕で特待生の席をもぎ取ったのだ。奴にとって優位に取れる魔法で勝てなければ勝利は意味を持たない!」
「はあ……」
面倒くさい負けず嫌いだな、とエトアは主人に対して思った。
ダイヤが遅れを取り返すべく手早く昼食を済ませていく傍ら、エトアはふと通りかかったリスタの方を見つめる。
会話の内容などは聞こえないが、彼女の周囲にはたくさんの友人が見られた。あれはクラスの委員長……それに生徒会長までいるではないか。
「すっかりリスタさんは有名人で人気者ですね」
「それはそうとも。この俺が有名にしたのだからな」
口元にソースをつけたどこか誇らしげなダイヤだったが、それに対するエトアの目は冷たいものだった。彼女の指摘にうっかりといった調子でダイヤが口元を拭った。
「それにしてはこちらは寂しいですけどね」
リスタに挑み始めてからというもの、取り巻きだった生徒は次々と愛想をつかしては離れていき、今では従者のエトア以外誰もいなくなってしまったのだ。
「なに、権威欲しさに仲良くしていた連中などはいない方がやりやすい。友人も十分にいるしな」
「ダイヤ様がそれで良いなら良いのですが……」
「それに、だ。次にやるべきことは理解している」
「なんでしょう?」
どこからか取り出した食後のティータイムと洒落込んでいるダイヤは自信満々に告げた。
「来週から『新人戦』が始まるだろう。そこで今度こそリスタ・シエラを打ち倒すのだ!」
「…………はあ」
エトアは何度目かになる溜め息を吐いた。
『新人戦』――というのは一年生全体(棄権可能)で行われる一対一で戦う試合のことである。放課後に催され、1人につき10戦行われる。勝率が高い者から順番に本戦である体育祭に出場できるのだ。
「勝算が無いわけではないぞ? 俺は一か月前のあの時挑んだ時から更に成長を遂げている……その成果を発揮する時が来たのだ!」
「まあ、別によろしいように……」
もはやエトアは突っ込むのも疲れて見守ることにしていたが、するとダイヤがおもむろに立ち上がったかと思えばなんとリスタの元に歩いていくではないか。
「ダ、ダイヤ様……?」
「リスタ・シエラ」
遅れて後を追ったエトアは今まさにといった場面に出くわしていた。
「次の『新人戦』、その時が貴様の最後だ。俺に倒される貴様のな!」
食事途中のリスタを呼び止めたダイヤがついに宣戦布告をやり遂げていたのだ。
「…………ふっ」
(決まった。とでも言いたげな顔をしています)
「『新人戦』って……なんですか……?」
ダイヤとエトアはリスタの友人たちと一緒にズッコケる羽目になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます