第8話

 疲れてました。


だから

錯覚だと思ってました。


2階だから

いつも階段なんだけど、その日はエレベーターを使いました。


今日も職探し失敗。


頑張ってるけど

春は遠い。

寒さと世間は冷たい。


 温かいコーヒーを飲んで考えようと、思っていたら


チカチカッって


ほんの一瞬

エレベーターの中の電灯が怪しく点滅し

2階に着いたその瞬間

誰もいないエレベーターの私の隣に


人が立っていた。


 背中に冷たい氷を入れられたような気分になる。私がリアクション芸人じゃなくて残念だ。本当に怖い時は声も出ず、ただ固まるしかできないのを知る。


 その人は歴史の教科書に載っているような、重たそうなよろいを付け、大きな弓を持っていた。


青ざめた顔

鋭い目

私より首一つ大きな身長でいかにも武将なんだけど、これは負け戦の武将さんで髪がザンバラでまげを取られたのだろう。いや…もう小さな箱が殺気でいっぱい。

殺気でエレベーターが落ちそうだよ。


 そして

錆びた鉄の香り?

いやこれは血?血の香りでしょう。


「主は源氏か?平家か?」

ヒューヒューと喉を鳴らして、その男は私に問いかける。


源氏?

平家?

なんだっけそれ?


何?

大化の改新?改心?快心?

鳴くようぐいす平城京?あれ?平安京?


頭パニック。

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