第6話

「でも……ですね」

浮かれる私にお兄さんは怖い顔をして言葉を続ける。


「この2階のフロアなのですが、渡辺様以外は誰も住んでおりません」


え?

そう言えば

人影がなかったような


「なんで?」素直に聞くと

「オバケが出るからです」素直に答えてくれた。

 はて、ここんとこ色々辛いことがありすぎて耳が悪くなったかな。


「このフロアは霊障があるのです。だから誰も住み続きません。どんな有名な霊媒師さんに払ってもらっても、ダメなんです。ほどんどの方が1週間ともちません。すぐ引っ越しされます」

 

そう言われると不安になる。

「じゃぁ、私3階に……」


「3階になると家賃が倍になります」

即答されてグッと言葉に詰まってしまった。強いな兄ちゃん。


 悩みながらも窓の外を見る。景色はバツグン。環境もいい。


 そして安い!

何度も言ってやる

 とんでも安い!

 すんごい安い!

 こんな物件逃しちゃいけない!


 今まで私はオバケなんて見た事ないし、信じてもいない。オバケより今の状況の方が怖い。


 だから「ここに決めます!」ってハンコを押してしまいました。

 そんなの気にしなきゃいいし……って思っていたんだけど



 これが


 ほんとにもう



 とんでもない話でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る