第14話 ☆ 祈り星 ☆

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「長い一日だったね」

 岡野 有希子さんが、こくりと頷いた。

「色々あったね。楽しかった?」

「うん。もう思い残すことはないの」

「どう、死んだ後の気持って」


 二人で見上げる暗い夜空には、カシオペアのW字が燦然と輝いていた。

「生きていた時の記憶ってね、死んだ後でもついさっきのことのように思い出すの。最後にいい思い出をありがとう」


「もう十分気がすんだ?」

「うん。もう十分すぎる。弥生さんありがとう」

「どういたしまして」

 しばらくそのまま星を眺めていた。


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「もう帰っちゃう?」

「そろそろね。だってこの機会を逃すともう成仏できないんだもの」

「用意はいいの?」

 にっこりと岡野 有希子さんが微笑んで頷いた。

 御祓いの用具一式を広げて、神妙に呪文を唱える。

 魂が鎮静されて、安らかにあちらの世界に移行できますように。

 心を込めて祈った───。


 岡野 有希子さんの体がどんどん光りを帯びながら浄化されていく。

 ひとつの「こころ」が渦を巻きながら、どんどん空へと舞い上がっていった。


 振り返ると、いままでなかったカシオペアの星座の近くに燦然と輝く空が煌めいていた。


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「有希子さんは綺麗な星になったんだね」

 こぼれそうな星空から、笑顔がこぼれ落ちたような気がした。


 さようなら───。


 星空を見上げる時には、きっとあなたのことを思い出すから───。


 安らかに眠って下さい。


 満天の星は慈しみに満ちあふれたように、地上を優しく照らしていました。


~ おしまい ~

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