第4話 ♪ 透とアイドルご対面 ♭

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 301号室「如月 透」と書かれた真っ白なドアをコンコンとノックした。

「弥生だよ。お見舞いに来たよ」

「どうぞ」

 珍しく、間髪入れずに中から透の優しい声が響いた。

 待ちきれずドアを開けると、いつもより元気な透の笑顔があった。


「透。この間会った時よりも元気になったね」

「うん。弥生、来てくれてありがとう。すごく嬉しい。その弥生の後ろの子は誰?」

「見える?」

「うん。今回ははっきり見える」

 透が笑顔で答えてくれた。

「だんだん、透視能力に磨きがかかるね」

「あはは、ダメだ。弥生」


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 透がベットの上で、お腹がよじれそうな程笑っている。こんな透を見るのは実は初めて。

 さらさらの薄い茶色の髪が、白い病室のカーテン越しの陽射しを受けて眩しかった。

 いつも綺麗だね、透───。


「今回の子は可愛いでしょ?」

「うん。超かわいい。一体だれ?」

「元アイドルの、岡野 有希子さん」

「年末の紅白歌合戦に出たことあるんじゃない? ひょっとしてその年の新人賞総ナメだったりして」

 透が名前覚えてる、覚えてるというふうに楽しそうにしゃべる。クールそうな眼差しが、今日はちょっと茶目っ気に輝いて見えたよ。


「ずっと病室にいるから、最近テレビはよく見ているんだ」

 透がちょっと恥ずかしそうに照れ笑いした。

「はじめまして。弥生さんの従兄弟の透さん」


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 岡野 有希子さんが、少し前のアイドルらしいスマイルでベットの上の透に微笑みかける。

「いや、どうも」

 透が目を細めて眩しそうな表情をした後、いつになく強い口調で間髪入れずに言った。

「正直言って、芸能界にまだ未練があるんだろう?」

 こくん、と頷いて、真剣な眼差しで透を見つめる岡野 有希子さん。

 弥生は、透の強い口調にちょっとびっくり。

 有希子さんのその円らな瞳は、心なしか潤んで見えた。

 一体、どうしてあげたらいいんだろう……。

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