第3話 # 謎のアイドル ♭
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「ねぇ、岡野 有希子って知ってる?」
芸能人のブロマイドを交換している、教室の片隅に固まっている集団の中でクラス1の美少女、高見 花 織が近くにいたので、とりあえず聞いてみた。
「あ……確か、3年前に飛び降り自殺した新人アイドル」
「大規模なムリプロスカウトキャラバンで、5万人の中から選ばれた珠玉のシンデレラというのがキャッチコピーでさ」
「スタイルがいいとかじゃなくて、愛くるしい笑顔とちょっと知的なイメージが売りだったよね」
みんなが口々に教えてくれた。
「で、確かこの学園出身で、売れ出したと同じ時期によそに転校していったとかいう噂も聞くよ」
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この学園で情報通の良輔がちょっと自慢げに口を開いた。
「でも、縁起悪いから、そんな話はよそうよ」
その直後にチャイムが鳴り、みんな一目散に次の教室に移動して行く。
「弥生さんは、勉強ばかりしていて芸能界にすごく疎いから。そんな話、全然聞いたことがないんでしょ」
花織が笑って廊下を駆けて行く。
「サンキュー。すごく助かる」
そして内心、こんな可愛い子。一度、従兄弟で幼なじみの透に会わせておかないとね、なんて。
あとで、透に何を言われるか分からないし。
透は小さい頃から体が弱くて、特に心臓の持病が最近悪いらしくて、ここ数か月ずっと近くの病院に入院している。
そろそろお見舞いに行かなくちゃね。
久しぶりに透の顔が見たいな。
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