実力差を分かって貰えない人もいる

「さっさっとやるわよ!」


 姉は張り切っている。ルリの支援無しなら勝てると思っているのだろう。


「フレイ!」


 姉は炎魔法を放った。姉の1番得意魔法なのか。このままだとずっと言ってきそうだから嫌だが炎魔法でお返ししてやるか。


「フレイ!」


 姉のフレイより少し大きめだ。


「ゴールドフェンリル無しよ!」

「してもらってないけど?」


 片手でルリの支援無しでも姉の魔法より大きいのだ。


 2人のフレイは交わった。俺のフレイの方が威力は数倍多く姉のフレイは消えて姉にまで炎は移った。


「やば、ウォーターボール」


 俺は直ぐにウォーターボールで炎を消した。


 しかし片手でも俺の魔法の威力はルリ無しでもすごいのだ。


「きゃあ!」

「ごめん」


 勢いで謝った。


「これはコハクの勝ちだな」


 父はそう言った


「何でよ!コハクはずるをしたんだから私の勝ちでしょ!」

「何がずるなんだ?」

「コハクは魔物の力使ったのよ!」

「さっきも言ったけど使ってないよ」

「嘘おっしゃい!」


 姉はずっと俺がルリに支援してもらっていると言っている。否定しても通じていない。


「ウォーーン!『我の主人を馬鹿にするな!』」

「バレて怒ってるのね!」


ルリの怒りに姉は意味分からない事を言っている。


「そりゃ馬鹿にされたら怒るだろ」

「コハクを信頼してる感じだからそうよねぇ」


 父と母はそう会話していた。


「お兄ちゃんじゃないのに何で言葉分かるの?」


 ずっと見ていたリンカが質問した。


「経験かな?」

「何となくだしちゃんとは分からないけどね」

「それに何もなければ吠えるはずないだろ?」


 父の言っている通りだな。


「フレイ!フレイ!フレイ!」


 姉は魔法の多発をしてきた。


「何してる!」

「やめなさい!」


 魔法の多発は慣れていないとコントロールも魔力や体力的にも厳しいのだ。 


「ウィンダー!」

「ウォン!『我も協力する!』」


 ウィンダーでフレイを全て消した。


 姉は魔力と体力切れで倒れた。


「お姉ちゃん大丈夫なの?」

「大丈夫よ、おそらく魔法の多発で魔力が切れて体力もついけてないから倒れただけよ」


 リンカは心配するが母が返した。


「ヒースイ、回復出来るか?」

「キュー?」

 ヒースイはここまで言われたのにするのが納得出来ないみたいだ。


「一応これでも姉だからな」

「これはエリカの自業自得だからしなくて良いよ」

「スイちゃんにも悪いしね」


 父と母フォローしてくれた。


「光魔法は出来るのか?」


 父は俺に質問した。


「攻撃魔法はできるけど回復魔法はやった事ないな」

「どうして?」


 俺の答えにリンカが聞いてきた。


「攻撃魔法は試し打ち出来るけど回復魔法は出来ても確認出来ないからな」


 俺はそう答えた。


「光属性も使えるならお兄ちゃんがやれば良いじゃん!」

「いや、使えるからって回復魔法が出来るとは限らない万が一間違えたりすると死ぬ可能性もあるからな」


 リンカの提案を俺は断った。


「ならやってみる?」

「何を?」


 母の言葉に俺は謎に思った。 


「回復魔法よ、もし心配しても私がいるか大丈夫よ」

「それにあのシン婆が認めたんだからな」

「そんなすごい事なの?」

「それは思った」


 リンカが質問した。

 俺も賛同した。


「シン婆はな基本は独学と言うんだでもあの時それは言わずにギルドカードを渡されただろ?」

「うん」

「あの人はね認めてる人でも推薦はしないのよまぁ推薦自体見た事無いけどね」 


 そう説明された。


「さっきお父さんから言ってた話は本当なのよ推薦はしてもらった人は誰1人いないけど薬場ギルドの全員、独学って言われてるのよ」


 そうだったのか。初めてだったのか。


「何でお父さんは冒険者なのに知ってるの?」

「こう見えてもBランクだからな知り合いは多いんだ!」

 リンカの疑問に父は答えた。


「さて、コハクやってみろ!」

「ライル!」


 初級の光属性の治癒魔法をかけた。

 姉に当てた手が光った。


「ん……何?」

「起きたか」

「私何してたの?」


 父が言うと姉は聞いた。


「お兄ちゃんに負けて倒れたよ」

「そうだった」


 リンカの言葉に姉は絶望していた。


「何かしたの?」

「普通に魔法を使っただけだが?ルリ無しでな!」


 少し強調して言った。


「エリカ、少しは認めたらどうだ?」

「嫌よ!」

「どうしてだ?」

「ずっと言ってるじゃないコハクなんかが私より強いわけがないじゃない!」

「さっき勝ってたじゃないか」

「あれは魔物の力を使ったからじゃない!」 

「2回目は使ってないだろ」

「嘘を言ったのよ少しだけ使ったんじゃないの?」

「そんな事ない」 


 父との会話に姉は納得していない。俺は否定した。


「何でよ!」

「お姉ちゃん、最近いつ魔法の勉強したの?」

「2、3ヶ月前ぐらい?」

「だから負けるんじゃないのか?」


 リンカの質問に答えたエリカに呆れていたのは父だった。


「私は強いんだから良いじゃない!」

「コハクが勝ったじゃないか」

「だからズルして勝った試合なんだから認めないわよ!」

「それに私は2属性もあるんだからやらなくても何とかなるしコハクにも勝てるのよ!」

「リンカ、お兄ちゃんはさっき何属性魔法を使ってた?」


 姉がそう言うと父はリンカに質問した。


「風属性に水属性、炎属性それに光属性も使ってた!」

「良く分かったな!」

「えへへへ」


 リンカが当てると父は褒めた。


「コハクはまだ4属性ある!」

「そ、それって!?全属性あるって事!?」


 姉は驚き叫んだ。


「そうだ」

「何か仕掛けたんじゃないの?」

「何を?」


 姉の言葉に俺は聞いた。 


「魔法よ!私より多いわけないじゃない!」


 姉はまだ言っているようだ。


「ならどうしたって言うんだ?」


 俺は更に聞いた。


「脅してでもしたんじゃないの?」

「それはない!」


 父が否定してくれた。


「あのおっさんが子供の脅しなんか聞くわけないだろ?」

「分からないじゃない!」

「他の大人の冒険者が脅しても殴って無理矢理解決させるおっさんがやるわけないだろ!」


 ほんとにあのおっさん何してんだよ!


「私は信じない!」

「もう良いでしょ!」


 姉の言葉にさっきまで黙っていた母が返した。


「コハクの方が強かったじゃないの!」

「だからズル「ズルなんかじゃないわよ!」」

「あの光魔法は私が知ってる中で最高だったわ!」


 母は僧侶で光属性の為に冒険者以外に薬場でも働いていた。


「お母さんが覚えてないだけでしょ!」

「そんな事無いわよ、私は……」

「母さんは薬場ギルドでは結構有名な僧侶だっただが俺について来てくれたんだよ」


 母もそんな凄い人だったのか。


「だからあの光魔法は初級なのに凄かった……」

「でも私は知らないわよ!」


 これを言われても姉はまだ納得していない様子だ。


「はぁ、もう良い」


俺は呆れた。


「俺はこれから森で暮らす」

「仕方ないわね」

「そうだな」


 父と母賛成してくれた。


「これで弱いのが居なくなってせいせいするわ!」

「誰が言ってるんだ!」


 父は怒っている。


「リンカはお姉ちゃんみたいにならない様に勉強する!」


 リンカは今日も元気みたいだ。


「決めたわ!」


 母が真剣に見つめて言った。


「エリカ、本当にコハクにも勝てるの?」

「もちろんよ!」

「コハクが冒険者になるのもあと2年エリカのソルディン学園の二次試験も2年2人とも試験の前にもう一度試合をしてそれで勝ったらエリカの入学を認めるわ!」

「コハクは何もないの?」

「コハクは勝てるなんて言ってないじゃない!あなたがつっかかってるだけよ」

「俺も認める」 


 そう母が言うと父も賛成した。


「分かったわよ、あと2年後ね!」


 姉は笑っていた。まだ勝てると思っているのかと同時にどんだけ馬鹿にしているかと呆れた。 


 俺がこの2年で謎に有名になっていくのは俺も踏まえて家族の誰も知らない。

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