ある従物の最初の力

「何でお前にそんな力あるんだよ……」


 父は呟いていた。


 神様の力なんて言えるわけがない。


「てか、あのおっさんが簡単に薬場ギルドを紹介するなんて、お前気に入られたな。」

「どう言う事?」


 ギルドマスターは丁寧にしてくれたじゃないか。


「あのギルドマスターはな、気難しいんだ」

「そんな感じしなかったけど?」

「あいつはな、人を見るのが得意なんだ、特に目を見てそいつの覚悟を知れるんだ!」


 あんな強面が凄い人だったなんて……


「あいつの目から見てコハクは認められたんだ」

「特に何もしてないけど?てかルリ達が理由なら都合良くない?」


 伝説の魔物をテイムしているからってあの態度は個人的にはやめて欲しい。


「それは違うな」

「何で?」

「あれでもギルドマスターなんだそんな事で差別なんかしない」


 まぁギルドマスターが差別なんて変か。


「お前が本当に冒険者に相応しいと思ったんじゃないか?」


 俺は正直嬉しかった。


「そうかな?」

「あぁ!あの覚悟がない奴は認めなかったりランクの高い冒険者でも、何か持ってきても高く売れる場所を教えずに冒険者ギルドで売らすおっさんがそう言ったんだ!」


 いや、あのおっさん何してんの!?


 しかし父の言葉で俺は本気で冒険者を頑張ろうと思えた。


 そう話しているうちに薬場ギルドに着いた。


「グライがここで何してるんだい?」

「こいつの付き添いさ!」

「誰だい?その子は」

「俺の息子さ!ヒグレ草を売りたいみたいだからここへ連れてきた」

「ヒグレ草!?お主本当かい?」


 父と話していたおばあちゃんが俺に聞いてきた。


「そうらし「あんたには聞いおらん!」」 


 この人ちょっと怖いな。


「で、どうなんだい?」

「本当だけど」


 俺はヒグレ草を見せた。


「本物のようだなぁ」


 俺は不思議そうに聞いた。


「本物以外にあったりするの?」 

「たまに偽物を持ってきてヒグレ草と言う馬鹿が居るからの」

「シン婆は鑑定スキル持ちだからな」


 それは凄いな。


「それよりこれをどれぐらい持ってる?」

「ルリ!」


 おばあちゃんの言葉に俺はルリを呼ぶとルリは持たせていたヒグレ草を出した


「ほう、面白い坊やだねぇ」

「だろ?いきなりゴールドフェンリルなんてテイムして…」

「そうじゃない、確かにゴールドフェンリルもそうじゃがこのヒグレ草の量にアタシはビックリしておるよ」


 まぁ、いきなり持ってくるとそういう反応になるのは当たり前か。


「確かに良い値段で売れるがこの量を光癒ポーションにできる奴なんてそういないからの、特に光属性が珍しいからのぉ〜」

「そういえばだけど冒険者以外に兼用って出来たりするのか?」


 父が質問した。俺の知識から難しいはずだ。


 例えば薬場だと僧侶が多いからな。たまにテイマーも治癒ができる魔物でやっていたりするが大体が僧侶より劣っている。


「出来ん事もないが?」

「こいつは光属性もあるから教えれば調合出来るだろ」


 調合とはポーションなどを作る方法の1つだ。


 大体は僧侶しか出来ないが光癒ポーションに限っては光属性の人でしか調合出来ないのだ。


 さらに僧侶以外の戦闘系などの人が持っていても調合を覚える事自体する人が居ない。


 その為に僧侶の人だけが冒険者と薬場を兼用している人が多い。


 光属性は珍しいから尚更だ。


「光癒ポーションはただでさへ作るのが困難だからの」


 Aランクの光癒ポーションを作るのは1番難しいのだ。


「魔法も覚える為にやりたい!」


 俺は自分が出来る可能性を知りたいのだ。


「キュー!」


 するとスイの一匹が光った。


「スイ、どうしたんだ?」

「キュー!」


 ヒグレ草を貸してと言ってる。一応貸してみるか。


「ヒグレ草を1本貰っていい?」

「お主のだから気にせんでいいぞ」


 おばあちゃんが言うと俺はスイにヒグレ草を渡した。するとスイはヒグレ草を食べた。


「何してんだ!?」

「アタシにも謎だよ」


 父とおばあちゃんは驚いている。それは俺もだ。


「キュー!」


 スイが入れ物が欲しいと言っている。


「何か入れ物ある?」


 俺が聞くととおばあちゃんが持ってきてくれた。


「おばあちゃんありがとう」

「まだそんな歳じゃないよ!シン婆とお呼び!」


 俺はシン婆から注意を受けた。


 シン婆から入れ物を受け取るとスイの目の前に置いた。


 スイは口から水を出した。


「こ、これは!?」

「どうしたんだ?」 


驚いているシン婆に父は心配している。それに俺は鑑定で確認した。


     光癒ポーションプラス

       Sランク

   ヒグレ草とスライムの調合で出来る  

   どんな状態でも体力も全て回復する


「何でプラスなんだ!」

 

 俺はこのポーションの事で叫んでしまった。


「何故お主にこのポーションが分かる?」

「確かに!鑑定できるシン婆なら分かるがコハクがプラスなんて知るわけがない」


 しまった!


 驚きすぎてつい声が出てしまった!


 これは包み隠さずに言うしかないな。 


「実は、前に鑑定スキルが分かったんだ」


 俺は説明した


「まじか!?」

「凄いのぉ〜、スイと言ったか?」

「はい!」


父は驚くがシン婆は素直に褒スイの名前の確認をしていた。


「お主のスイの一部はヒールスライムに進化したのだ!」

「進化?」


父が質問していた。


「進化とは余りないがテイマーである主への信頼度が高いと進化するのだ」


 進化か、よく見ると助けたリーダー的存在だったから色々と見ているのか!


「で、でも何でプラスなんですか?」


 偶然聞いていたであろう薬場ギルドの1人が聞いた。


「進化はテイマーからするとある話だがスライムの

中の唾液は清潔なものを食べるほど清潔なのだ」


 スイはあの森の暮らしでヒグレ草が生えている草むらにいたならありえる。


 普通に食べ物を与えていル人はスライムにとっての清潔ではないのか。


「そのスライムはどこにいたのだ?」

「森だよ?」


 俺は返すとシン婆以外の人らが行こうとした。


「待たんか!」

「何でですか!?」

「その子らが捕まったらお主らは責任を取れるのか?」

「急に何ですか?」

「どんな魔物も強要されて良いものは生まれない、絆があるから生まれるのだ!」


 シン婆いい事言うなぁ。俺は感心していた。


「コハクのスライム達は主人を慕っているのがこの目でも分かるお主達の目は節穴か!」

「でも、今後の為に考えてるんですよ!」


 薬場の1人が反論した。


「なら、1人の少年に全てを託さんか!」

「コハクが今回の事をやったのだそれを他人が勝手にやるのは可笑しいじゃろ」

「俺は別に良いけど」


 俺はフォローをした。別に独り占めしたいわけではないからな。


「アタシがそんな事許さないよ!」

「シン婆落ち着いてくれよ」


 父も止めた。


「光癒ポーションは普通のでも状態異常以外ならそこそこ体力が回復するそれがプラスになると状態以上関係なしに体力が全回復すると言う優れものじゃ」

「それをアタシらが調べても何も出ないと長年の勘が言っておる」


 やっぱりシン婆いい歳だったんだな。


 ん!?シン婆に睨まれた、やはり怖いな。


「ここは、若者に託そうコハクのタイミングで皆に言えば良い」


 俺はスイにこの事を世界で知らせて良いか聞いた。


「キュー」

「別にいつでも知らせて良いみたいだよ」

「ほんとか!?」

「でも俺の名前を出すのが条件だって言ってる」


 スイが言うには俺のお陰で力を出せたみたいだ。


 それにしても種類が違うからスイだとややこしいな。


「お前はヒースイって名前にして良いか?」


 俺は急にヒールスライムに聞いた。


「キュー!」


 喜んだみたいだな。


「名付けは後で良くないか?」

「何でも早いうちが良いからさ」


 父がそう言ったが俺は反論した。


「確かにそうだな」


 父は納得したようだ。


「お主らの条件は分かった」


 シン婆は納得した様子で答えた。


「光癒ポーションプラスはいくつ作れる?」

「ヒースイ、ポーションはどれぐらい作れる?」

「キュー!」

「それが無くなるまでは何度でもだって」


 光癒ポーションプラスの量を確認するとヒグレ草が無くなるまでと答えた。


「よしとりあえずやってくれるか?」

「ヒースイ、出来る?」


 そう聞くとヒースイはヒグレ草を勝手に食べてやっていた。


「とりあえずその作業が終わってからお金の計算をやろうか」


 この時の父は全部で相当な金額になる事を知らなかった。


 そして俺もこのヒールスライム以外光癒ポーションプラスを作れる者が現れない事を知るのは大分先の話だった…

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