鉤を忍ばす

 取調室で西村警部が独りでタバコをくゆらせているとドアが開き、渡警部と谷山警部補が入って来た。


西村警部が目を上げると渡警部は一歩進み出て頭を下げた。


「すべて我々の誤認です。ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」


「渡よ!誤認と分かったら潔く頭を下げるくらいの事はできるんだな! しかしまあ……お前たちはそれだけマシという事だ! それに免じて今回の事は不問に付す。これに懲りて部下の指導をより徹底させる事だな」


「ご指導ありがとうございます。 その上でお聞きしたいのですが、もし西村警部ご自身がミスを犯した時はどのような対応をお取りになられますか?」


「オレか? 潔くするだけだ。さて、もう無罪放免だな!帰らせてもらうぞ」


ここで初めて谷山警部補が口を開いた。


「お待ちください! ちょうど食事の用意をさせていたので召し上がってはいただけませんか?」


「ん、そうだな!長時間缶詰にされて、そこそこ腹も減った!いただこうか!」

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