バッジに隠された物は?

 取調室へ入って来た柴門刑事は西村警部の前にドカッと腰を下ろした。


「証拠を見つけましたよ」


「何をだ?!」


「あなたの襟です! 穴が開いたままだ! バッジはどうしたんです?!」


「お前の様な若造に言うつもりは無い!!」


「オレが若造かどうかは関係ない!! バッジはどこにあるんです?!」


「すっこんでろ!!」

西村警部の怒鳴り声と同時にドアが開いて谷山警部補が入って来る。


「柴門!! 西村警部に対し失礼だぞ!!」と柴門刑事を窘めた谷山警部補は西村警部の方に向き直る。


「部下の非礼をお詫びいたします。その上で申し上げますが、我々は現場でバッジの留め具を見つけました。それが、あなたの物で無いのなら、あなたのバッジはどこにあるのか教えていただけませんか?」


 西村警部が缶から両切りのタバコを出すと谷山警部補はマッチを擦って火を点けた。


西村警部はタバコを深く吸い込むとため息をつくように煙を吐いた。


「なあ、タニよ!今まで完璧にやっていた事ができなくなった……それに気付いた時のオレの気持ちが分かるか? まさにバッジがそうだ! 老いを感じたよ。『もうオレの出る幕はない!潮時だ!』こうも思ったよ」


「バッジ……無くされたのですか?」


「いいや!別のスーツの襟に付いたままだった」


そう言って西村警部はポケットから鍵を出して机の上に放り投げた。


「家探しでも何でもするんだな。ついでに鑑識にも回せ!」


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