Necromancer's Mother Print(ネクロマンサーズ マザー プリント)
日陰
プロローグ
おばあちゃんが死んだ。
私の最愛の人だった。ほとんど家に帰らず、たまに顔を合わせても喧嘩ばかりしているパパやママなんかより、私にとっておばあちゃんは生きる意味そのものだった。
だからおばあちゃんが死んだ日、私も死んでしまおうとも考えた。
こんな世界で生きるより、死んでおばあちゃんに会いにいく方がずっと幸せだと思ったのだ。
おばあちゃんを見送って、ちゃんと遺品整理もしたら、私も旅立とう。
そんな決意を固めながら、おばちゃんがいなくなった部屋で1人遺品を整理していると、一枚の茶封筒を見つけた。それは私宛の手紙のようだった。
手紙にはいろいろ書かれていた。概ね私のことを心配するような内容だ。おばちゃんが自分が苦しい時にだって、私のことを想ってくれていた。
嬉しくて、同時にとても悲しくなった。
胸にぽっかりと空いた空洞が、さらに大きくなったような気がした。
でも手紙はそれだけで終わらなかった。そして茶封筒に入っているのは手紙だけではなかったのだ。チャラという音を立てながら出てきたそれは、どこかの鍵だった。
”私にそれを呼び覚ます力はなかった”
”でもお前には、その力がある”
手紙にはそう書いてあったが、私にはさっぱり何のことか分からない。代々受け継がれてきていた力がずっと弱まってきていたが、私は隔世遺伝によって云々。難しい話はよく分からない。
そもそもこの鍵はどこの鍵なのか。場所は手紙には記されていなかった。
でも、おばあちゃんから託された何かであることは確かだ。私は死ぬ前にそれが何なのか確かめたかった。
私は家の敷地内をとにかく手当たり次第に探した。そして日が傾きかけた頃、私は家の敷地にある物置と化した離れで、私はようやく見つけた。
その鍵は、たくさんの物で隠れていた地下への扉を開けるためのものだった。もちろん私は今まで地下の存在なんて知らなかった。
長く続く階段。私は一段降りる度に、久しく感じていなかった自分の鼓動が明瞭になっていく。
階段の先にあったのは、古く重そうな扉。こちらは鍵が掛かっていない。私は身体を使って何とかその扉を開ける。埃が舞って、咳き込んだ。長らく誰も立ち入っていないようだった。
部屋は真っ暗だった。でも、入り口の側には、古い扉とは打って変わって真新しい電灯のスイッチがある。パチっとスイッチを入れると、部屋の中央の電灯が点滅を繰り返した後に、暖色の光で部屋の中を満たした。
そしてその部屋にあったのは死体だった。
きっと私はこの日を忘れることはない。
酷い意味じゃない。だって、その死体はあまりにも綺麗だったから。まるで時が止まっているみたいに。私は息を呑んで、しばらくその美しさに意識を奪われてしまった。
運命の出会いだった。
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