第2話 私のいた世界。
これは私の生前の記憶。
私は、名家の久堂家の一人娘として生まれた。
「海紗ちゃん、いい子ねぇ」
そして、海紗(みさ)と名付けられ、最初は両親に愛されていた。きっと、愛されていたはずだった。
でも、物心がつく頃には両親は私への興味は無くなり、私の扱いは荒んだものとなって行った。
その理由は簡単。代々、久堂家の人間は透き通る様な淡いピンクの瞳と薄茶の髪が必ず受け継がれ、身に宿る。しかし、私は久堂家の娘でありながら、この血を全くひかなかった。紺色の髪にネズミ色の瞳。久堂家の象徴とする特徴がひとつも無かったのだ。
言わば、「久堂家の恥さらし」だ。
最初は可愛がれても、その幸せはほんのひと時のものだった。
つまり、これが私の不幸のはじまりだった。
「お前なんかいらない」
「こんな汚い子が家をうろついて良いと思ってるの?」
「汚らわしい。」
そんな言葉は当たり前のように浴びせられた。叩く、蹴る、殴るなんて当たり前。洋服や物もほとんど与えられない。勿論、異論反論なんてしたら何されるか分からない。
そんな日々だった。
小学に入学する時には、家紋に傷をつけまいと表向きでは良い両親を振舞っていたが、当然、家での扱いは粗末なもの。
おまけに、「久堂家の恥さらし」は、世間体でも有名になってゆき、学校ではいじめられるようになっていた。
学校にも、家にも、私の居場所はなかった。ずっと1人だった。
友達の1人も、何かを愛することもできなかった。そんな私は、次第に心を真っ白にして、いつしかどんな感情も表に出さない子へと変わって行った。
意味もなく、ただただ苦しい日々を過ごすのにも耐えるのにも疲れたと、17になる冬の日、私は遂に死を決意した。
きっと来世は幸せに生きられると微かな望みを胸に隠して───。
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