もうこの世界には疲れましたので、来世に行ってもよろしいですか?

彩音

第1話 もう思い残すことはない。

「おい!危ないぞ!」

「とまれ!」

「誰か緊急停止ボタンを!」

そんな声は私には響かなかった。そんなものどうでもいい。私はこの世では用済み。


この降り注ぐ冷たい真っ白な雪も、何もかもが霞んで見えた。この雪が私の血も心も体も真っ白に染めて、消し去ってくれるだろう。そして、この雪が私の死を覆い隠すようにみんなの記憶から私が消えてしまえばいい。心の奥底からそう願った。


もう、この世界に思い残すことはない。


「さようなら」


私は、それだけ言い残して、電車に向かって飛び込んだ。


___…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る