第4話

玲はそんな女に一瞥くれることもなく、ベッドから降りるとすぐさまシャワールームへと消えた。

 女は肩を弾ませ、玲の後ろ姿をただ眺めていた。

 均整の取れた美しい身体に、美し過ぎる顔。

 女は唾を飲み“欲しい”と強く願った。

 だがそこで女は慌てて首を振った。

 それは決して言ってはならない言葉。

 それを言ってしまえば、二度と近付く事は許されないからだ。


 噂……。

 女はモデルの仕事を生業(なりわい)としていて、若い世代ではカリスマ的存在で名の知れたモデルだった。

 そこで聞いた噂が“西園寺 玲”という男の事だ。


 恋情さえ絡まなければ、玲が気に入れば抱いて貰える。

 それと、10代の女は相手にもしないという事。

 そして自分の名前は決して玲には教えてはならない事。

 女はその噂……“玲に抱かれる為の条件”を頭に思い起こさせ、長い息を吐いた。


「10代の女を相手にしないのは流石ね……。本当……彼は自分を良く分かってるわ……」


 玲とは10歳程離れた自分でさえ、玲に心を奪われるのだから……。

 女は自嘲するように声を押し殺して笑った。

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