第7話



「うわぁーすごい! 可愛い!」


「でしょ? フフ」


 さっきまで苛ついていた事も忘れ、感嘆の声をあげる私に誇らしげに答えながらも、その瞳には薄らと涙を浮かべてる母に、私はゆっくりと抱きついた。


「ねぇ……お母さん」


「ん?」


 母の顔を見ようと少し顔を上げると、私の髪を優しく撫でながら、漸く着いたマイホームを見上げていた。


「嬉しい?」


「そりゃあ嬉しいわよ。12年ぶりの我が家ですもの」


「だよね」


 母に倣って目の前の家を見上げた。

 真っ白な外壁で、まるでお伽噺話にでも出てきそうな可愛い小さな洋館風の一軒家。

 母と祖母にピッタリだと思った。


 ポーチには控えめながらも、優しい色合いの花々が存在を主張するかの様に、見事に綺麗に咲いている。


 庭にある芝生も手入れされてて、青々として綺麗だった。

 綺麗だけど……。


「ここって私達が引っ越ししてから、誰も住んでなかったんだよね?」


「そうよ。私達の家だもの。誰にも住まわせないわよ」


 フフ……なんて笑ってる母だけど、腑に落ちない事がある。外壁までが、異常なまでに綺麗なのってどうなのか。


「花とか……家とかすごい綺麗だよね?」


「本当……綺麗」


 核心をついたつもりなんだけど……。

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