第4話

 大好きな祖母と、一緒に暮らしてきた町から離れる事は、とても寂しかったし胸が痛んだのも事実。だけど、本当のところはあの町にはあまり未練なんてものはない。

 だから、あの町から離れる事になって少しホッとしてる自分がいて、思わず嘆息をもらした。


 新しい街。

 両親や祖母・祖父にとっても、思い出深い街。あの町では叶えられなかった事を、此処ではと願わずにはいられなかった。


 漸く車が、住宅街に差し掛かった時。


「リリ見てぇ! あれがリリの通う高校よ!」


 なぜか通う私よりも、嬉しそうに言ってくる母を微笑ましく思いつつ、前方に見えて来た学校に目を向けた。


「ふ~ん……やっぱり田舎より大きいね」


「もぉ! リリったらもっと感動するとかないの?」


 余りにもドライな返答をする私に、拗ね気味の母の顔は何とも可愛らしいけど。


 感動……学校に?

 そりゃあ、やっぱりこれから待ってる女子高生ライフが、楽しみじゃないって言ったら嘘になるけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る