第13話 えっと……後は———
「———……ヒロト殿、これは……一体どういうことだ?」
「えーっと……それがですね……話せば長くなるんですけど……取り敢えず、彼女がヴァイアさん、この子がレシアちゃんです」
「……そうか」
「……そうです、はい」
「「…………」」
そう何から言えば良いのか迷う俺の目の前では……拘束状態のプリムに、明らかに魔族とも人族とも違うヴァイアさんとレシアちゃんという謎の人物がいることによって、困惑している様子のドレイク辺境伯閣下が座っている。
お互いにティーカップに入った紅茶だけがなくなっていった。
「……ねーひろとー、これってなあに?」
だが、俺の膝に乗っていたレシアちゃんがこの沈黙に耐えきれなくなったらしく、くりくりお目々で俺を見上げつつ、ティーカップに入った紅茶を指差す。
当たり前だろうが、案の定肉食のドラゴンは紅茶を飲まないらしい。
「これはね、紅茶って言うだよ。でもあんまり甘くないし不思議な味だから、レシアちゃんの口には合わないかもね」
「ちょっと飲んでみたーい」
「ちょっとだけだからね」
「わーい!」
どうしてもレシアちゃんには甘くなるんだよなぁ……何て自覚しながらも、にぱーっと笑顔を咲かせてティーカップを俺を真似て持つ彼女を見て、仕方ないかとあっさり思考を放棄する。
しかし、直ぐにレシアちゃんが渋い顔をして舌を出すと。
「うげぇぇー……苦いよぉ……草のあじしゅる……」
「「あ、可愛い」」
「ヒロト様、一体此処が何処なのかを自覚してくださいませ。レシア様も、あまりヒロト様の邪魔をなされてはいけませんよ? これからヒロト様は大事な大事なお仕事なのですから」
「おしごと? ひろとっておしごとするの?」
おっと、レシアちゃんから俺はニートだと思われていたようだ。
ただ、正直ニートのように生活していた数年前に戻りたい人生ではある。
「ままのおしごとはね、みんなを守ることなんだよ! だからね、ままはとっても強いの!」
「そうなんだーっ! レシアちゃんのママは凄いねー!」
「うんっ! まますごいの!」
そうレシアちゃんがヴァイアさんを見て、可愛らしくも誇らしげにむんっと胸を張るもんだから、ヴァイアさんが歓喜に目尻に涙を浮かべている。
「レシア……っ!!」
「ヴァイアさんって、意外と涙脆いんですね」
「人族の小僧は黙っていろ、今妾が幸せの余韻に浸っているのが見えないか? それともその顔に付いている目は節穴か何かなのか? もし節穴ではなく目であるというならば、そこの魔族の娘に回復魔法でも掛けてもらうがよい」
このドラゴン、レフェリカに負けず劣らずの毒舌なんですが。
メンタル豆腐の俺には美女からのガチ罵倒という時点でオーバーキルなのですが。
「レフェリカ、あの人怖いから何とか……レフェリカ?」
「……ヒロト様、私は今物凄く不機嫌です。私はあれほどヒロト様を隣で支え、好意を伝えているというのにぞんざいな扱いをするのに対して、まだ出会って数時間も経っていないレシア様にはとことん甘く、挙げ句の果てに気持ちの悪い顔でデレデレすることが許せません」
「おい何てこと言うんだよお前。てか誰に嫉妬してんだよ、レシアちゃんはまだまだ子供だぞ? あと、せめて温かい目で見ていたと言ってくれ、お願いします」
「気持ちの悪い顔というのは否定しないのですね」
「否定しているから言ってんだろうが。俺の話を聞いてたか?」
そこまで言っても、依然としてぶすっとした、如何にも『私不機嫌です、不貞腐れています』的な表情でそっぽを向くレフェリカ。
……うーん、非常に面倒臭い。
相手は性別は女とは言え、ドラゴンで幼い子供だぞ? もう1度言うが、相手はドラゴンでまだまだ幼い子供だぞ?
てか子供に優しくするのは当たり前だと思うんだが……女って面倒な生き物だな。
何て、きっとこんなことを思ってしまうから、俺は人生で1度も彼女が出来たことがないのだろう。
「……えーっと、つまりは、こういう方々です、はい」
「さっぱり分からない。一体ドラゴンはどうした? 死体は? そのままにしているなどとは言うまいな?」
引き攣る表情の俺を鋭く睨むドレイク辺境伯に詰められるも……横からヴァイアさんが口を挟む。
「ほう……貴様が妾を殺すように命じた元凶か? フンッ、見るからに頑固そうな典型的な魔族の男だな」
「あ、ちょっ……」
小馬鹿にした様子で鼻を鳴らすヴァイアさんに俺が止めに入るも。
「……何だと? ……まさか、この女が儂や我が領民達に散々迷惑を掛けてくれたオオトカゲだとでも言うか?」
自分の悩みの種であった奴に煽られたドレイク辺境伯も額に青筋を浮かべ、負けじとドラゴンに1番言っちゃいけないことを平然と言ってのけやがった。
お陰でヴァイアさんもすっかり怒り心頭といった感じで掌に炎を燃え上がらせる。
「ほう……ただの魔族風情が言うではないか。ドラゴンをトカゲ呼ばわりすればどうなるか、その身が燃え尽きるまで教えてやろう」
「黙れ。貴様のせいで儂と領民達がどれだけ被害を被ったと思っている? 貴様こそ2度とその舐め腐った態度を取れないようにしてやろう」
対するドレイク辺境伯も何処からともなく取り出した大剣を握り、魔力を身体中に巡らせる。
正に一触即発の気配。
そんな中、俺は、その全ての光景を見ていたであろうプリムを一瞥すると。
「まぁまぁ御二方……特にヴァイアさんは落ち着いてください。これから話す内容を聞けば、きっと御二方の怒りの矛先も変わるでしょう。というか絶対変わるからちゃんと聞いてくれ、マジで」
そう言ってにこやかな笑みを浮かべながら。
「———ほらプリム、後は頼んだ」
「!?」
全てを丸投げして、レフェリカの胸の中でジタバタ暴れるレシアちゃんを抱っこするのだった。
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本当にすまん、超絶遅くなった。
ちょっとクリスマスイブとかいう日が気ぃ悪くて遅くなったわ。
折角銀髪に染めたのに、たった1日でめっちゃ色抜けて萎えたのもある。
てかそう、今日はクリスマスイブなんだよ。
作者? こうやって後書きを書いている時点で察せられるよね、うん。
クリスマスとか恋人持ちじゃなかったらただの夜だから。
何ならただの平日の夜だから。
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