第11話 打倒! 秀忠その1 修正版
23年に発表した「政宗が秀吉を殺していたら」の修正版です。実はPCの操作ミスで編集作業ができなくなり、新しいページで再開したものです。表現や文言を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。
空想時代小説
1616年10月、稲刈りが終わったところで信州で戦が始まった。政宗勢は真田兄弟、上杉氏(57才)、直江氏(56才)、色部氏(29才)、黒川氏(35才)の総勢2万5000。徳川勢は水野氏(52才)と石川氏(50才)の3万。場所は善光寺平の川中島である。かつて上杉謙信と武田信玄が激闘をかわした場所である。今回は、政宗勢が受け手、徳川勢が攻め手の陣形である。上杉氏は養父謙信とは逆の立場になり、複雑な心境であった。
騎馬隊は政宗勢が優勢だったが、鉄砲隊は明らかに徳川勢が圧倒していた。馬防柵はないが、槍隊の槍ぶすまの奥に鉄砲隊が控え、そこから撃ってくる。弓隊の攻撃には政宗勢と同じように盾で防いでいた。一進一退の攻防が続き、一日が過ぎた。
その夜、政宗勢は上杉氏を中心に評定を開いた。上杉氏は政宗から総大将の命を受けている。上杉氏は無口な人間で、めったに口を開かない。評定をすすめるのは直江氏である。
「おのおの方、この戦どうされる?」
皆、沈黙の時を過ごした。しばらくして、信繁が口を開いた。
「拙者が決死隊で中央突破をはかり、敵の本陣へ向かいまする」
「馬鹿な。すぐに囲まれるではないか! 無駄死にじゃ」
兄の信幸が叫んだ。
「囲まれれば、敵の陣形が崩れまする。そこを右と左から騎馬隊が突っ込みます。幸いに明日は霧がでると地元の者が話しております。この時期には、朝もやの日が多いのは確かです」
「霧がでれば、敵の鉄砲隊はあまり役に立たんな」
直江氏の言葉に皆うなずいた。直江氏は上杉氏と相談して、内諾を得たのだろう。陣ぶれを話した。
「では、明日の陣ぶれを発表いたす。先陣は信繁殿の騎馬隊3000。その後ろに信幸殿の弓隊3000。右の騎馬隊は色部氏の2000。左の騎馬隊は黒川氏の2000。敵の陣形が崩れたら攻撃していただきたい。後詰めには拙者の5000。本陣は1万。上杉殿には敵が突進してきたら、鉄の軍配団扇で守っていただきたい」
「わしは信玄役か!」
上杉氏の素っ頓狂な声に一同は笑いを隠せなかった。ふだん無口な上杉氏が見せた意外な姿であった。政宗勢の意気は盛り上がっていた。
翌朝、予想どおり朝もやがわいた。信繁の騎馬隊は静かに前進した。昨日と同じ陣ならばよいが、陣どりを変えていれば不利となる。草の者(真田の忍び集団)も朝もやが濃くて、陣どりはわからなかったとのこと。敵が見えたら、一斉に突っ切る作戦である。四半刻(30分)ほどで、敵が見え始めた。昨日と同じ陣どりである。信繁の合図で、騎馬隊は一斉に突進していく。敵は急に攻められたので、うろたえている。鉄砲隊は、まだ火種に種火がつけられていなかったようで、一発もとんでこなかった。矢が何本かとんできたが、動きの速い騎馬隊相手では命中率が低い。3万の軍勢の中央部にくさびが打ち込まれた状態になった。
本陣の水野氏はそそくさと逃げ出していた。鶴翼の陣の弱点は、中央部の本陣がさらされていることである。本来は、敵を囲い込む陣形だが、今朝のような朝もやの中では動きがつかめず。機能しなかった。ましてや騎馬隊の後ろから弓隊がやってきて、鉄砲隊がねらいうちされている。撃ち返しても盾で防がれる。また左右からも騎馬隊に攻められ、3万の軍勢はばらばらになった。総大将の水野氏が逃げ出した今、てんでに逃げるしかなかった。1刻(2時間)ほどで、戦闘は終わった。川中島には3000ほどの死体が転がっていたが、ほとんどが徳川勢であった。朝もやを予見し、決死の突撃をした信繁に賞賛の声があがっていた。しかし、これで終わりではない。松本城を奪い返さなければならないのだ。
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