発動! STGスキル

息子と妹のやりとりを見ながら、ビール缶を傾ける人志は、翔太にたずねる。


「で、スキルの使い方のとっかかりもないわけか?」


「う。ま、まぁ、いろいろ試してみたってところだけど。今日、スキル検査したばっかだしなぁ……」


「そうねぇ、わからないものはアレコレ考えてみてもはじまらないし、その研究所の人たちにまかせたら良いんじゃないかしらねぇ?」


「スキル研究所かー。あとで検査の日程を知らせるって、担任の先生、言ってたけど……」


「解剖とか改造とかされちゃうのかなー? ヤバげだよね?」


「ちょ!おま!止めろよ。縁起でもない」


「でも未発現の新スキルだよー。ね? おじいちゃん? 解剖だって、解剖! アメリカの博物館に人間の輪切り標本ってあるんでしょー」


「なんで俺がそんなのにならなきゃいかんのだ! ヤバすぎるだろ!」


「せいぜい血液検査ぐらいでしょ? おおげさよ」


「かーさんは病院勤めだから、そーゆーのに慣れすぎなんだよ」


「まぁ、ヒットポイントが3しかないから、前線には立てんだろうし、いわゆる内勤スキルってところだろうな」


「うーん、あんま稼げないスキルだったら、さっさと別の職業を目指すのもありだよな」


職業としての探索者は、塔内をうろついてナンボである。


ヒットポイント3というのは、塔どころか、道端でぶつかった小学生相手にもクリティカル・ダメージを食らいかねない数字だ。


塔のモンスター相手に戦える道筋すら見えない。


「ちょっと、学校初日から転職考えるとか、現代の若者すぎでしょ! ズンズン、シュパーでジャランでしょ?」


「んなジャランジャランとか言ってもなぁ、『赤』とか『青』とか、どんな効果なのか予想もできないしなぁ……」


祖母のソラがイチゴもみんなに勧める。


「まぁまぁ。今年は気温の差が大きかったからとても甘くなったって。隣の内田さん、親戚がイチゴ農家やってらっしゃるから」


「結構、もらったねぇ。お返しは何がいいかなぁ」


人志がビール缶片手にお返しの品を考える。


おもむろに翔太はテーブル中央の網かごから、赤いリンゴを1個取り上げて、ポンポンと片手でもてあそびながら、考えあぐねる。


「はぁー、スキルかぁ……ジョブの『ショットフォース』って、後衛系のアタッカーっぽいんだけどなぁ? ショットフォース。ショットフォース。ショットフォース。……ショット……、――っ!!」


突然、リンゴを持った翔太の前面の空間が赤みを帯びて揺らぐ。


空間が赤い燐光を発したかと思うと、翔太からテーブルの対面にいる人志に向かって、半透明の赤い光弾が打ち出される。


額にもろに光弾を食らいのけぞり、ビール缶片手に椅子の2本足でバランスを保ったままの人志に、家族全員、固まってしまう。


「のわっ!!」


「うわっ!親父、大丈夫か! ……って、今の!」


「きゃっ! おとーさん、死んだ!」


「いや! 死んでない、死んでない、死んでない! って、おい翔太! 今のまさか……!」


「ス……、スキル!?」


「どーやったの? なになになに? 何が起こったわけー?」


妹の晴香がひときわ大騒ぎするなか、ひばりがピースサインを横にしたように目に当てて、父親をのぞき込む。


いわゆるチェキポーズだ。ひばりが鑑定スキルを発動するときのクセである。


回復技師のひばりは探索者稼業から病院勤務に鞍替えしたくちなので、病名診断やケガの重度を判断する医師同様、鑑定スキルを持っている。


ガコンと大きな音を立てて、ダイニングテーブルに突っ伏す人志に、ひばりがあわてて駆け寄る。


「ちょっと、あなた、1HP削れてるわよ!」


「あらまぁ、人志さん、大変!」


「もっかいやってみて! もう1回! もう1回!」


「もう1回って……。うーん、こうか?」


「こ、こら! 父親をマトに使うんじゃない!」


「こりゃ、驚いたわい。そうじゃのう、こんな狭いところでスキルを使うのは危険じゃ。外で試してみんか?」


「家の前じゃ、ご近所に迷惑だわ。近くの公園かしらね?」


「そーそー! 公園いってみよ、公園! カエデ公園!」


「ポーションとか持っていかなくてよいかしらねぇ?」


「あら、私が回復スキル使えますから、大丈夫ですよ。人志さん、ヒットポイント130ありますし、半分くらいなら……」


「いやいやいや、マトにはならんぞ? マトには」



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