獲得! ハズレスキル

会場全員からの視線は、翔太を、がんじがらめにしてしまう。


数の暴力は、翔太の身体をこわばらせる。


デバフ状態の翔太は、ゆっくりと、恐る恐る、スクリーンを振り返る。


「な、なん……? いったい……」


名前:只野翔太(性別:男)

ジョブ:[ショットフォース]

レベル:1/5

HP:3/3

MP:-/-

BM:-/-

STR:1/16

INT:-/-

DEF:1/*(3s)

DEX:-/-

SPD:2/32

LUK:-/-

スキル:[赤][青][緑][黄][][][][]


「ヒット……ポイント……、3? ……は?」


思わずうめく翔太。目点である。


周囲の学生たち、教師、スキル検査技師が口々に小声でそれぞれの隣の相手に話しかける。


翔太の同級生たちは、口をあんぐりあけて翔太を見ている。


「こ、これは……?」


「うっわー……、3って小学生にワンパンじゃん?」


「レベルの横の数字、なに? もしかしてレベルの上限? ありえねー」


「マジックポイント、ゼロだって。なんで失神してないの?」


「……っていうか、なくない? MP」


「BMってなに?」


「すげー……、全パラメータひと桁って初めて見たぜ」


「てか、パラメータ、ねーのもあるし」


「インテリジェンスがゼロって知的障害なんじゃん? 何あれ?」


「あのスキルってなんなの?」


「赤って、ファイヤーボールとか?」


「でもマジックポイント、ゼロっぽくない?」


「わけわかんねー……」


スキル検査技師が我に返って、会議用の細長いテーブル越しに翔太に呼びかける。


「君、ちょっとこっちに来て、スキルを発動してみてくれないか?」


「え? あ、はぁ?」


若いスキル検査技師たちが、機器にコードをつないだり移動させたりなど、いそいそと動いて、素早く闘技施設4面の試合場の内のひとつを使って、結界魔法を展開させる。


燐光が、細長い立方体状に、内部に攻撃エネルギーを閉じ込めるための半透明の壁が形成されていく。


もし強力なスキルだった場合は屋内では危険だ。立方体の端っこには丸いブルズアイの標的が立てられ、スキル検査技師により翔太は立方体の反対側の端に誘導される。


会場全員が注目する中、スキル検査技師が翔太に指示を与える。


「あれに向けて君のスキルを撃ってくれないか?」


「え、えーと……? スキルってどうやって……? あの『赤』とか『青』とかいうヤツですか?」


「そう、それ」


「え……、あ、赤? 青? ……って、スキルなんすか?」


右手の手のひらを標的に差し出して、うんうん額に汗して唸る翔太であるが、うんともすんともスキルは発動しない。


「ぐぬぬ……」


興味深げに翔太を見守るオタク3人組。


小田は眼鏡に手を掛け真剣に翔太を眺めており、平田は口をいまだにポカーンとあけたままである。


大塚は女子生徒の太ももぐらいはあろうかという腕を組んで身じろぎもせず、翔太の苦闘に見入っている。


早乙女は、やれやれと髪をかきあげ、イケメン的に呆れた感を醸し出している。


美園は両手を胸の前で組み、まゆをハの字に下げて綺麗な顔をくずし、心配そうに翔太を見つめている。


なかなか、スキルが発動できない翔太に、スキル検査技師はつぶやく。


「むぅ……、マジックポイントがないということは魔法系のスキルではないということか……、しかし『ショットフォース』とは遠距離系の攻撃手段を連想させるが……、むぅ、だれか弓矢を持ってきてくれないか?」


するとすぐに背広を着た教師が、体育館に隣接した備品倉庫から弓矢を持って駆けてくる。


「君、これで試してくれないか?」


「え、いや、初めて触るんですけど、武器……」


翔太は初めて触る武器に、まるで勝手がわからない。


弓矢を構えて放ってみるものの、まるで見当違いの方向に矢が飛んでいく。


何回やっても標的に当たらず、生徒たちから失笑がもれる。


学園初日で公開処刑である。


翔太も、もうヤケクソである。


「こ、今度こそ……! スキル、スキル……ってどうすんだ? 『赤』とか『青』とか……、くそっ……」


失敗を続ける翔太の脇でスキル検査技師たちが教師たちと集まって相談する。


「弓矢がダメってことは、銃器のほうでしょうか?」


「まだかかりますか……? 検査の終了していない生徒もいますし……」


「むぅ、これは後日、ちゃんと研究所のほうで検査したほうがよいでしょうな」


「未認知のスキルが同時に4つも現れるなど初めてですし……」


「そうですね、まだ未発現のスキルもまだあるようですしね」


ユビキタス紙への、データのインストール処理をしながら、スキル検査技師が、翔太にアレコレと指示をする。


「まれにユニークスキルを発動する者がいるのだが、どうやら君もそうらしい。我々も初めて出くわしたスキルなので、まるで手がかりがつかめません。ちゃんとした研究設備のあるところでの検査が必要だろうね」


「う」


「あと効果も類型もわからないので、不用意にスキルを発動したりしないようにね。塔の中以外での能力行使は危険です。とりあえず、君のユビキタス紙にはこの検査結果のデータを入れておきます。では、後ほど担任の先生を通じて連絡をいれるので、そのようにね」


「は、はぁ……」


事務的なやりとりをしながら、翔太はユビキタス紙に目を向け、げんなりうなだれる。


元気づけようとしているか、それともバカにしようとしているのか、早乙女が翔太に向けて声をかけてくる。


「はぁ、やれやれ。身の丈にあったスキルが発現したという感じかな? まぁ、しっかりやりたまえ」


「うぐぐ……」


「た、只野君、ガンバ! きっと、どうにかなるから!」


「あはは……、ありがとう、美園」


「いや、しかし、あれは確かにレアスキルの輝きだったでござる。いったい、どんな効果のあるスキルなのでござろうな?興味シンシンでござる」


「後で検査って、大丈夫だろうなぁ、俺……。解剖とかされちゃう?」


「うーん、謎深ければ、さもありなんといったところでしょうか」


「いやいやいや、解剖、ヤベーだろ! 否定しろよ!」



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