緊張! スキル検査
話し込んでいるあいだに、検査の列の先頭まできていた。
美園が教師に呼ばれる。
「つぎ、検査番号77番」
「あ、わたし」
「大丈夫、きっと、良いジョブだよ。いっておいで」
「うん、ありがとう」
「あうあう……」
不安がる美少女への、やさしいいたわりの声掛けを、早乙女にかっさらわれてしまい、翔太は、しどろもどろになってしまう。
なぜ、こんなときに、すらすら、キザでイケメン風のセリフがでてくるのやら。
放っておくと、美園が危険である。
美園は、白衣の検査技師の指示通りに、スクリーン前のマークに立つと、緊張のあまり、目をギュッとつむる。
「はい、じゃ、チカラを抜いてー」
検査技師は、美園の緊張と不安とは、対照的に、軽い一言をかけると、おもむろに、スキルライトを照射した。美園の体が光をあびて、強い燐光を放つ。
他の生徒より、一段、強い光だ。
「おお!?」
美園の燐光が収まると、スクリーンに、美園のステータスが表示される。
美園綾香(性別:女)
ジョブ:[エクスヒーラー]
レベル:1
HP:65/65
MP:87/87
STR:25
INT:82
DEF:44
DEX:49
SPD:50
LUK:42
スキル:
[体力回復系統術]
[状態異常回復系統術]
[防御支援術]
「おおー、いいスキルが発現してるねー。系統術系は、すべての回復術が使える優良スキルだよ。ただ、鍛錬は怠らんようにしないとね。上位のスキルは、時間がかかるからねー」
美園は、スクリーンの前で、半身をねじって、呆然と、スクリーンに見入っている。
「おお!やったでござるな、美園嬢!」
「うーん、すごいね。おめでとう、綾香くん」
はじかれたように、美園は翔太たちのところに小走りでやってきた。
さきほどまでの緊張と不安がとけて、目がうるんでいる。
「わ、わたし……」
「すごいね、回復術のエキスパートだよ」
「やー、これはこれは、経験値かせぎが大変ですな」
「……」
翔太は、これはスゴイと、素直に感心する。
翔太は、美園が中学のときから回復師になりたいと、周囲にもらしていたのを聞いている。
そのための努力をしていたのも知っている。
持ち前の性格の良さと美貌から、クラスのみならず学校内でも人気のあった美園が、ひとりになると、図書館のホロアーカイブやネットの情報を真剣に見つめているのを、なんども見かけた。
はぁ、よかった。よかったよ~。
美園になにか、気の利いたひとことでもかけられれば良いのだが、もくもくと翔太の頭上に広がる暗雲が、美園に対する、おめでとうの言葉をのどに詰まらせる。
祝辞の雰囲気として、いかにもふさわしくない感情が翔太に去来する。
今は、美園のことより、自分のことだ。
小田が先ほど言っていたように、スキルが発現するのが人類全員だとしても、それが探索者向けのジョブやスキルであるという保証はないわけだ。
自分は探索者向けの生活や鍛錬をしてきたであろうかと、表情をこわ張らせる翔太である。
しかしである、小太りの小田が前列戦闘系のジョブを発現し、また、筋肉ダルマの大塚が魔法使い系のジョブを発現してしまうのだから、これは、もはやスキルガチャであることは疑いようがない。
美園は、日ごろのおこないが、良かったのだろう。うんうん、さもありなん。
問題は、翔太自身である。
翔太は、突然、進路とか、将来とか、仕事とか、いままで真剣に考えたことのなかった色々なことが、一気に、アタマの中に流れ込んでくる。
遠くのほうで、雷の落ちる音がする。ゴロゴロゴロゴロドロドロドロドロ……。
これはフランケンシュタインとか吸血鬼とか狼男とかみたいなヤツが住んでいる古城の向こう側でゴロゴロする的なヤツであろうか。
今の翔太は、十字架もムチも装備してないので、対処のしようがない。
翔太は、突然の将来選択に、美園以上に不安にかられてしまう。いやな予感マックスである。
「次の生徒。検査番号78番。只野翔太。いないかー?」
「あ、俺だ……」
「がんばってね、只野くん!」
不安と緊張の試練をくぐり抜けた美園が、翔太を元気づけてくる。うれしい。
いつもなら、うれしいのだが……、頑張るといっても、何を頑張ればよいのだろう。
翔太は、顔がこわばる。
しかし、美園から、ガンバッ、と形のよい胸の前で両手で握りこぶしを作られては、もうどうしようもない。
検査に向かうしかない。ロープなしのバンジージャンプに向かう気分だ。
会議用の長いテーブルの向こうから氏名を確認してくる教師に返事をし、スキル検査技師が、翔太の左腕にまかれたユビキタス紙に、ステータス用のデータシート・フォーマットをインストールする。
スキル検査の手順は、機械的に、スクリーン前の検査台に、翔太をうながす。
「はい、じゃ、息をゆっくり吸ってー……。体の力を抜いてー。スキルライトを当てているときは動かないよーにぃ……」
すーすーはーはーすーはーはー。
ささやき。沈黙。緊張。重圧。
まるで大昔のRPGのワンシーンのような緊張感に満たされていく翔太である。
スキル検査機器が一瞬だけ輝き、光を浴びる翔太。
……と、非常にまぶしい強い光が翔太を包む。
他の生徒たちのような燐光ではない。
強烈な輝き。
闘技施設全体がホワイトアウトするぐらいの強烈な光だ。
検査会場にいる全員が何事かと光源である翔太とその後ろのスクリーンに目を向ける。
学園の教師やスキル検査技師は、あまりのことに固まっている。
クラスメイトの美園や早乙女、小田たちも思わず声をあげる。
「おお、これは……!」
「むぅっ……!」
「きゃっ!」
びっくりして翔太は硬直したままだ。
光が次第に小さくなって消えていく。
代わりに、小さなざわめきが沸き上がり、次第に検査会場全体に広がっていった。
「え……? なに、あのステータス?」
「うっわー……」
「あれって、レアスキルの光だよね? ええぇ……、何あれ?」
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