第33話 楽しみと緊張の朝

自室から窓の外を見てみると、雲一つない青空が見えた。まるで、今日という日を祝福してくれているかのようだった。ただ、俺の心はというと晴れ晴れとした快晴かと言われると、微妙なところだ。いや、晴れは晴れなのだが、少し雲がかかってしまっている。……緊張という名のな。自分で言っててなんだそれって感じだな……これ。

 ただ、もちろん楽しみではある。今持てる全ての楽しい気持ちをぶつけるつもりだ。

「とりあえず、リビングで待つか。」

 今日も菊原と広田が家に来てくれる予定だ。俺が二人の家に出向くのは少々ハードルが高いので、申し訳ないが二人に甘えた形である。

「あれ、陽輔君が自ら下に来るなんて珍しい……。」

「お前……俺を馬鹿にしすぎじゃないか?」

 リビングのドアを開けると、花月がこちらを驚いた顔で見つめてきた。

 俺だって、毎回毎回花月に起こされて動き出すわけじゃないからな。自堕落な小学生と勘違いしてるんじゃないでしょうか。

 ……でもよくよく考えてみたら、花月が来てからほぼ自力で起きたときなかったな。何なら目覚まし代わりにしてたし。確かに、着替えも済まして自力で起きてきたのは初めてかも……と考えながら花月のほうを見ると、なんかニヤニヤしていた。

「それだけ今日が楽しみだったってことですね♪」

「…………否定しづらいな。」

「否定せずに自分の気持ちに正直になっていいんですよ♪」

 否定するのはさすがに広田と菊原に悪すぎる。それに、純度100パーセントの嘘になってしまうし。俺の正義感的にそれはできない。

「じゃあ、今から朝食作るので、ウキウキしながら待っていてくださーい。」

「今日の料理にはそんなに自信があるのね……。」

「違いますよ。今日の遊園地を楽しみにってことですよ♪」

 花月は終始ニコニコしながらそう言ってくる。……はっきり言って鬱陶しいなあ。

「……今日の朝食は昨日みたいに失敗するなよ。」

「ウッ。嫌なことを思い出させますね……。大丈夫です。昨日失敗したんですから、確率的には成功するはずです!」

「神に頼るんじゃなくて自分の腕を頼れよ……。まあ、お願いする。」

「はい!始め良ければ終わりよしという言葉もありますし、任せといてください!」

 花月は元気よくそう言い、キッチンへと駆け出して……勢いよく転んだ。トリプルトォーループくらい綺麗なフラグ回収だな。前途多難。

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