第21話 落ちてきたフライパン
「はぁ……疲れました。」
「本当にな……。」
時刻は夕方4時過ぎ。本日の業務を終え、俺と花月は抜け殻になっていた。
一日中勉強を教えたらこんなに疲れるんだな……。身体動かない。頭も回らない。俺は壊れかけの人間ロボット。
「……よし!じゃあ、お礼に今日は私一人で夕食を作ってきますので、大船に乗ったつもりで待っていてください!」
花月が急に大きな声を出して、元気に駆け出していった。さきほどまで、俺と一緒に魂を口から出していたのに、いつ正常に戻ったのやら。本当、元気ねぇ、最近の若い子は。あ、一応、俺の方が年下なのか。
「俺も行きたい……ところだが。」
このまま花月一人に作らせるのも癪なので、身体を動かそうとするが、マジで身体が動かない。これが引きこもりの限界か。普段しないことに対する耐性が極度に低い。機能停止。
「仕方ない。お言葉に甘えて少し休むか……。」
言質は取っているわけだから、バチは当たらないだろう。それに、気持ちは動きたいが、身体がついてこないのだから仕方ない。本当は、花月の手伝いをしたいんだけどなー。頭も腕も足も動かないんだからどうしようもないなー。よし、ちょっと寝よう。
と、俺がベットで横になろうとした瞬間、ドンがらがっしゃんピッポコピーのぺっぺと、下の階から聞こえてきた。
えぇ……、何があったの。仕方ない行くか。重い腰を頑張りに頑張って上げ、階段を降りキッチンのほうへと向かうと、そこには床に突っ伏している花月と散らばったフライパンがあった。……これは何があったの。
「……どうしたの、これ。」
俺は呟きながら、花月の肩をつんつん指でつつく。すると、花月はビクッと身体を震わせて、ゆっくりと顔を上げる。
「……私は一体何を……。ハッ、思い出しました。ああああ、すみません。とんだ醜態を……。」
「いや、それはもう何回も見てるから、別に。それより、何があったの。」
普段、s字フックで吊っているフライパンも散らばっているが、それ以外にも普段コンロの下の棚にしまっているものもあるんだよな……。上に吊り下げられているものが下に落ちているのは何となく状況はつかめるが、そうじゃないやつは……不思議な状況である。
「いやあ、しまっているフライパンを見つけてテンションが上がってしまって、上に掲げたら吊っているフライパンに当たってしまい、それが頭の上に当たってこんな状況に……。情けない。」
「ああ、なるほどな。」
そんなピ〇ゴラスイッチ的なことが……。俺は花月のドジに呆れる気持ちより、この状況の答え合わせが出来たことによる納得感のほうが強くなっていた。もう、ドジなのは周知の事実だしな。
「……妙に納得しないでくださいよ。……いや、すみません。わざわざ様子を見に来てもらって。私は大丈夫ですので、陽輔先生はどうぞ休んでいてください。」
「……そう言われると、手伝いたくなるな。」
「天邪鬼ですね……。」
昔からそういうタチだからな。皆の期待を裏切ってここに来ている感あるし。
「分かりました。じゃあ、お手伝いお願いします。」
「了解。それに、また失敗されたら敵わないしな。」
休もうにも休まらない。
「それは大丈夫ですよ。もう、私失敗しないので。」
「……全然カッコよくないぞ、それ。」
失敗にもうがついたら、それは誰にでも言えることになっちゃうしな。
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