第20話 ここに来た理由

「う~ん、やっぱり頑張ったあとのご飯は格別ですね!」

 勉強を一旦終え、今、俺と花月は昼ご飯を食べているところだ。

 本当、こいつは喜怒哀楽が激しいやつだな。……まあ、その反応をしてもらえるのなら、頑張った甲斐はあるといったところか。

「まあ、それは良かった。」

「はい!美味しい料理をありがとうございます。……これで、美味しくなかったら許せないところでした。」

「……本当、勉強嫌いなんだな。」

 そんな発言が出るくらいストレスがたまる行為なのか……。それは、なかなか大変だ。

「……そうですね。じっと座ってるのも嫌でしたし、ずっと集中しなきゃいけないのも嫌でしたし、それでいてあまり理解できないから退屈でしたね。……そしてなにより、皆より劣ってるのがまざまざと分かるのが嫌でしたね。」

「そうか……。」

 花月の口ぶり的に学校の授業の話だろう。俺としては勉強がそんなに嫌いじゃないから、嫌という感情はそこまでなかったのだが、勉強嫌いの人からしてみれば、本当に避けたいくらいに嫌なのだろう。……嫌なことをするしんどさは俺にも何となくは分かる。

「でも、HKKに入ってから授業するようになって、テストするようになって、勉強も嫌いだけどこのままのほうがもっと嫌だなと思ったんです。……もう馬鹿にされたくないって強く思いました。」

「……強いな。」

 花月は本当に強い人だ。

「まあ、普通に仕事するうえで必要ですしね。ちょうど陽輔君は勉強できるみたいなので、申し訳ないですが手伝ってもらおうと思って。」

「……邪推かもしれないが、それも俺を選んだ要因?」

「そんなこともないこともないかもしれないところかもしれない……ですかもねぇ~。」

「……当たってるんだな。」

 言い方はまわりくどかったが、否定は二回しかしていなかったので、恐らくそうだろう。現に花月も図星!って顔してるし。

「でも!別に理由の一つってだけです。他にも理由はありますからね!」

「ああ、そうなの……。」

 まあ、昨日も聞いたしそんなに大した理由はないのだろう。

「それに、あまりに出来ないと上司に怒られますし……。これまで何度も怒られてきました。辛いです。」

「なるほどな……。」

「なので!これを食べて!午後も頑張ろうと!思います!」

「……おお、その意気だ。」

 花月の勢いの良い言葉に俺は面食らう。まあ、やる気があるのは良いことだな。……でも、花月のやる気に従って俺も頑張らないといけないんだよな。まあ、仕方ないか。

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