アカシック・クイル

@kurokuro11223344

第1話 弱い正義は悪に簡単に壊される

「気をつけろよ、触れただけで崩れるかもしれんからな。」


「わかってるよ。っていうかなんでこんな洞窟の中にやけに古い家みたいなのがあるんだよ」


 ここはとある洞窟、俺たちは今日洞窟探検に来たはずだった。入ってしばらく歩いていると道に迷ってしまいあてもなく適当に歩いていると謎の民家?小屋?のようなものが現れた。重要なのはここが光の届かない洞窟だということだ。俺たちは好奇心が湧いてその家の中を探索することにした。


「お!」


「なんかあったか?」


「小さい箱がある!」


 そう言い見せてきた物を見る。だいぶ埃をかぶってはいるが、長方形の小さな、高めのペンをいれるには丁度いい箱だ。箱の表面に何か書いている、ちゃんと書かれているものは見えるが、実際何が書かれているのかは完全にわからない。見た所文字のようなものだとわかるが、英語でもジャパニーズでも他の言語でもない何か別の文字のようなもの。


「開けてみるか」


 鍵のかかっていない小さなそれなりの重さを持つ箱、開けてみたい欲が湧くのは仕方ない。


 箱の中身はペンだった、やけに高級感を感じさせるペン。


「・・・変だな、こんな洞窟の最奥にある謎の小屋の中に保管されているペン、小屋の中は明かりを使った形跡もないし、ペンがあるのに紙がない。おかしすぎる」


「まぁ一回そこら辺の壁で試し書きしてみるか」


「バカ!?見るからに高そうなペンを粗末に扱うんじゃ・・・」


 箱からペンが取り出される、するとペンから徐々に光が漏れる、有り得ない光景だ。その光はさらに強まっていき、次第に重力に逆らい浮かんで行っている。ペンから発せられる光で洞窟全体が明るく照らされる。衝撃のあまり声を出すことを忘れてしまった。


 ペンは光りながら洞窟から地上への道に沿って移動する、それは彼らにとってはこれ以上にない救いだ。


 やがて地上に出たペンはさらにその高度を上げ、雲を突き抜けた辺りで止まる。


 その光は一つから無数の光へと分裂し、そのまま四方八方へと散らばって行った。


 それは同時にこれから起こる災厄の種でもある。



―――――

「おら!!泣き喚け!!」


「ハハハハ!コイツ馬鹿じゃねぇの?今どきこんなに馬鹿なやついねぇぞ?」


「次俺ェ」

「じゃ、その次やらせて!」


「「ハハハハハハハハハハハハ!!」」


 俺は今、絶賛こいつ等不良野郎のサンドバックだ。あまり自覚してなかったが今日理解した、俺は弱いものいじめが嫌いなのだと。

 別に見て見ぬフリをしていればよかった、手を出せば奴らの次のターゲットになることなど分かり切っていた。

 

 けど出来なかった、ここでただ傍観するのは違う、助けれるのなら助けるべきだ。強きを挫く強さを俺は持ち合わせてはいないが、そんな弱い俺でも助けることくらいできる。


「ほらさっさと謝れよ、「私は愚かな勘違い正義マンです、申し訳ございませんでした」って土下座して!ほら!早く!」


「「土・下・座!土・下・座!土・下・座!」」


 こいつらは俺に土下座を求めている。いっそ土下座したら許してもらえるかもしれない。


「早くしろよ、そこの地面に頭擦り付けるだけの単純作業だぞ?」


「一人じゃ出来ねぇってか?」


 いやこんな奴らに土下座するくらいなら2階から飛び降りて両足骨折した方がまだマシだ。


「・・・ねぇぞ」


「あぇ?なんて?聞こえないよー」


「声ちっせぇよ」


「俺は謝んねぇぞ、聞こえたか?それとも耳クソ詰まって聞こえないか?」


 言ってやったぜ。


「殺す、佐田、そこにある鉄パイプよこせ」


「反田それは流石に不味いんじゃ・・・」


「ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさとよこせ!!」


「・・・これでも同じこと言えんの?ん?」


 それなりの長さの鉄パイプの先を俺のこめかみ辺りに軽くコンコンしている。今のコイツはかなりキレている、最悪加減なしのフルスイングで鉄パイプを振り抜きそうな雰囲気を感じる。


 だがここで折れては駄目だ。


「頭下げるくらいなら死んだ方がマシだ」


「・・・あぁ・・・そうかよ・・・!!じゃあお望み通りにしてやるよ。佐田、コイツの両手を抑えろ」


「え・・・お、おう・・・」


 マズイ、それは予想してなかった。この後鉄パイプをなんとか手でガードして耐える作戦だったのに。


「ちゃんと頭フルスイングでアヴァランシュみたいにかち割ってやるよ」


 鉄パイプを振り上げ、大きく溜めている。


「死ねぇ!!」


最後に見えた光景は振りかざされた鉄パイプが当たる寸前の景色だった。


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