さらに戦う娘たち 5:青髪ボブ無表情系素直クール従妹幼馴染の慕情
「あー……」
「お待ちしておりました」
白い肌を飾るシースルーのベビードール姿があまりにもハマリすぎている。
「――
「はい、
「ほうか、やっぱねえさんか……」
これ知った日にゃさすがの
あるいは卒倒するだろうか。
成人済みの娘とはいえ、男親からすれば複雑極まりない悪ふざけのは間違いあるまい。
しかし同時に男女間の戯れのことでもあるし、告げ口した日には叔母が怖い。
結局直志は自分の胸の内にしまうことにした。
「心臓に悪いからこれきりに――いや、やるときゃ先に教えといてや」
「わかりました。喜んでいただけたようでうれしいです」
「顔に出とった?」
「いいえ。ただ従兄さんはダメなことはそうおっしゃいますから」
「なるほどなァ」
どっちにしろ助平心は見抜かれていそうだが、それもまぁいまさらな話か。
そう思いながら
百六十センチ強と女性にしては長身の赤穂だが、百七十前後のすずりや男でも長身といえる唯月と比べれば小さく見えた。
ただそのかわりに、体つきの女性らしさでいえば一番だった。
すずりや唯月のそれとは質の違う肌の白さがまたそれを引き立てている。
青い血管がはっきりと目立つ透明でみずみずしさを伴った、どことなく
品定めする直志の視線に機嫌を損ねることも無く、赤穂は立ち上がって見せつけるように自らゆっくりと一回転してみせた。
ふわりと裾を広げたベビードールの背は大きく開き、胸部分は桃色の先端も大きくせり出した白い峰の全てもシースルー越しに晒して、強調するようにレースが華やかに縁どっている。
どれだけ鍛えても柔らかさを失わない、思春期には悩みの種だったはずの豊満な肢体を見せつけるように背で手を組んで赤穂は直志に微笑みかけた。
「ところでわたし、Hの75になりました。従兄さん」
「なんでカップ数申告したん??」
「最近、そういうのがご趣味だとうかがったんですけど」
「いやまぁ、ボクも健全な男として当然興味はあるけどもやね……いやちょい待ち、Hで75ぉやったらトップはメーター越えてへん?」
「はい、百二センチですね」
言って赤穂は胸を張る。
人形めいた顔が、心なしか得意げに見えた。
「ウ、ウソやろ……こんなことが許されてええんか……?」
あっさりと告げられた衝撃の事実に、視線が胸元に引き寄せられそうになるのをこらえて直志はこめかみを抑えた。
「許されないなら、わたし従兄さんにこらしめられちゃいますか?」
誘惑に屈するのはやぶさかではないが、この従妹相手に主導権を渡してしまうのは危険だと本能が警告していた。
「いやまぁ、今のはそない意味とちゃうねん」
最悪、今日がパパへの第一歩になりかねない。
こほん、と咳払いをして話題を変える。
「あー……そういや、赤穂ちゃんは素直クールやんね?」
「そうですね? そのつもりです」
「ほなええと、青髪ボブ無表情系素直クール従妹幼馴染か……?」
「従妹でも幼馴染って呼ぶんでしょうか」
こてんと赤穂が首をかしげる。
――相変わらず狙っとんのかわからんなあこの子。
あざとい仕草なのだが、不思議と自然にも見えるのだった。
「幼馴染やないのもおるやろし、ええんちゃう?」
実際に母方の従兄弟とは数えるほどにしかあった覚えがない。
「それもそうですね。じゃあさっそく準備いたします」
「あ、待った。赤穂ちゃんフェラはなしで」
直志の前にひざまずいた赤穂を制すると、珍しく顔にわかりやすい不服の色が浮かんだ。
「――どうしてですか。あれからちゃんと練習もしましたし、もう歯をあてるような無作法はしません。今日は従兄さんにもきっと満足していただけます」
「いや、意地悪で言っとるんやないで? ただ赤穂ちゃんキス魔やん。多少はええけどフェラしたその舌で口ン中全部舐めまわされるんは勘弁やで」
「むぅ……」
「まぁキスすんの我慢できんのやったらええけども」
「無理です。キスのないセックスなんて従兄さんのいない週末みたいなものです」
そう言われると我慢できそうなものだが。
「その例えはわからんなぁ……ほな、赤穂ちゃんの準備だけしよか」
「それなら大丈夫です。大阪から離れてる間、ずっと従兄さんの音声ファイルで鍛えてきたので」
「なにしとんのキミ」
「なので今はもう、従兄さんに名前を呼んでいただくだけで実はわたし反応するようになってますよ」
「まぁた聞きたくなかった事実やなあ……」
パブロフだってそんな面白むごい条件付けは行わなかっただろう。
直志の反応が芳しくないのを見て、赤穂の顔にわずかに疑念が浮かぶ。
「男性は手間のかからない女の方が好みだって叔母さんに教わったんですが」
(ねえさん、ホンマなにしてくれとんの――)
「いやある意味赤穂ちゃんものっそい手間ァかかるけどな?」
「えっ」
自然な流れで口から出た直志の自然な評価に赤穂は不自然に動きを止めた。
ぎぎぎ、と作り物めいた動きで首をかしげる。
人形を思わせる美貌がするとあまりにそれらしすぎる動作だった。
「わたし、もしかして面倒くさいですか?」
「自覚無かったことにこっちも驚くわ」
信じられないと言わんばかりに固まった赤穂の脇と膝の下に腕を回し、直志は彼女を持ち上げて布団へ運ぶ。
「きゃっ」
「まぁ最近思うんにゃけど、案外ボクめんどい子ぉの方が好みかもしらんわ」
「なら従兄さん、二人きりのときは他の
「ハイハイ、面倒くさ」
「ふふ」
割とクズな発言に赤穂は幼い子供のように無邪気に笑った。
§
「んで赤穂ちゃん、どない風にしてほしい?」
コンドームをつけながら直志が聞くと、少し悩んで赤穂は布団から身を起こした。
「じゃあ従兄さんは座ってわたしを抱っこしてもらえますか」
「まぁたわざわざインモラルな言い方しよんなあ」
幼いころにせがまれていた当の相手に言われると、少々座りの悪さを覚える。
「失礼しますね」
あぐらをかいた直志の脚をまたぐように立った赤穂が、男の肩に手を置いてゆっくりと腰をおろしていく。
外に膝を開いたがに股の姿勢はかなり煽情的でいささか品が無かったが、赤穂はその表情をまったく変えない。
「んっ……」
それがわずかに揺れたのは、直志が腰に手を添えて位置を誘導したときだった。
「赤穂ちゃん、大丈夫け?」
腰をわずかに引いたのを感じて直志が聞くと従妹は小さくうなずいた。
「はい。その、久しぶりだから少しびっくりしただけなので」
「無理せんでもええで? しっかしエッグい下着はいとんなぁ」
豊かな胸につられて今の今まで気づかなかったが、ショーツは前部分が開いているものだった。
「こういう日のために用意してたんです。初めての時は普通のしかなかったので」
「そこは普通で良かったんちゃう?」
「従兄さんにも覚えていてほしいんです」
「そこまでやらんでも忘れへんけどな――」
言って唇を重ねると、赤穂はすぐにそれに夢中になった。
「んっ、ふぅ……んむ、んちゅ、ふぁ、にい、ふぁん……んっ」
鼻息も荒く小さな唇を押しつけ、唇で唇を挟み、音を鳴らして、短い舌で男の口中をつつき舐め回す。
内心の盛り上がりをあらわすように、ベビードールをまとった白い体がもどかしげに男の上でくねった。
「ん、む――従兄さん、わたし溶けちゃいそうです」
「また男殺しなこと言うてくれるなぁ、それも習ったん?」
「いいえ。素直な、わたしの気持ちです。だから従兄さん――」
至近の距離で見つめ合いながら、赤穂は人形めいた顔に恋する娘だけにできる、幸せがなにかを確信した笑みを浮かべた。
「わたしの全部を溶かして、あなたの好みに作り変えてください」
「……前のめりな子ぉやなあ。ちょい心配なるで」
(こらボクで自制せんとなぁ)
そうしなければ際限なく溺れてしまいそうな引力に直志は密かに苦笑を漏らした。
§
行為のあと、汗も拭わぬままの体をぴたりと重ねて離れる気配のない赤穂を胸に抱き、直志はぼんやりと天井を見上げていた。
自身の部屋とほぼ変わらない、格子状に古びた板が並ぶ年季を感じる天井だ。
「ん、んむ……ん……きゃっ」
もごもごと何やら口にしつつ、首筋にキスと甘噛みを繰り返す赤穂を体の上へと持ち上げる。脱力した彼女の体は、水の入った袋を思わせた。
「あの、従兄さんもう一度、ですか?」
「んにゃ、今日はもうええかな」
期待とも怖れともつかないその問いを否定すると、赤穂の目に浮かんだのはやはり安堵とも落胆ともつかない色だった。
「重くありません?」
「ちょうどええよ、んげ」
返事が不満だったのか、胸板に赤穂の額が押しつけられる。
そこからじいっと上目遣いににらんでくる姿は、近寄るくせに触れるのは許さない猫のようだった。
「よーしよし」
「……」
もっとも赤穂は頬に近づけた手に自ら顔を押しあて、ぐいぐいと豊かな二つの峰をさらに押しつけてきたが。
無防備な姿を見れば自分がどれだけ心を許されているのか、想像はつく。
行為の最中の、全てを捧げる宣言は赤穂からすればまったくの本心だろう。
その意味を改めて考えると脳内に彼女の過去があふれかえった。
「――なぁ赤穂ちゃん」
「ふぁい、なんでしょう?」
「今さらやけどキミ、大学行かへんで良かったん? たしか模試の結果、旧帝大も余裕やったんにゃろ。珍しく佳哉叔父が自慢しとったから覚えとるわ」
「……」
「その動きはなんなん??」
唐突な問いだった自覚はあるが、普段通りに表情を変えないまま、両手を頬に添えて「ほふ」と熱い息を吐く姿にはそう聞かざるをえなかった。
「すみません。従兄さんがわたしの過去を覚えていた事実と、それをさかのぼって気にしてくださった事実に感動していました」
「そか……大丈夫そ? 色々と」
「はい。ちょっと愛しさがあふれそうなだけです」
「心配になる返しやなぁ……」
なんとなく赤穂の下腹部が触れているところが湿っぽくなった気さえした。
「もうちょいボクに歩み寄ったコミュケーションお願いするわ」
「はい。ですが本当に行きたい進路を選んだだけですから、気になさらないでください」
「行きたい進路なぁ」
文武両道と知られた赤穂・
退魔師にとって学歴はあまり意味のあるものではないが、それでも違う選択肢はあったはずなのだが。
「わたしにとってなにより大事なのは少しでも早く従兄さんとパパの力になれることだったので」
「ビジネス系のガッコなんやったっけ」
「そうです。秘書の二級も取れましたし、結構役に立っていますよ」
なるほど、大叔父の頭の出来が違うという評価はひいきにみえて適当なものだったわけだ。
「ほな余計なお世話やったな」
「そんなことありません――本当は少し向こうにいる間は、大阪に戻してもらえるか不安でした。だから今、従兄さんがわたしのこと考えてくださってたのがわかって安心したんです」
「あー……」
赤穂の偏愛っぷりが危惧されて、ほとぼりが冷めるまで遠ざけていく決定がなされたのは事実だった。
何か一つ食い違えばそんな事態も確かに起こりえたのかもしれない。
そうして、今の今までそれをさして気にしてなかったのが本当のところだった。
「ま、そうはならんかったんやし、めでたしめでたしやね?」
「……従兄さん?」
露骨なごまかしに赤穂はすっと表情を消して、直志の胸板に歯を立てた。
「あだ」
「ひどいです。持ち上げて落とすなんて、DV彼氏じゃないんですから」
「なんかごく最近言われた気ィするなあ、それ」
それから直志の体に無数に残る大小の傷をなぞりはじめる。
くすぐったさを感じながらも動きは止めず、ただあやすように彼女の背に手を置いた。
「――代行、赤穂様、お休みのところ申し訳ございません」
そんな従兄妹たちの交流を遮る声が部屋の外からかけられた。
「…………」
珍しく不満そうに頬を膨らませる赤穂の頭をポンと叩いて体の上から下ろし、直志は外へと声を張る。
「はいはい、なんにゃろ」
「例の娘の意識が戻りましたので、お伝えに参りました。いかがなさいましょう」
最後まで聞かずに直志は体を起こした。
「会おか、ちょい待たせといて――赤穂ちゃんはどないする?」
「もちろん、ご一緒します」
身支度を整える二人は、すでに退魔師としての顔になっていた。
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