TS魔法少女、拳ひとつで怪物を倒して街を守る。秘密を抱えながらも仲間に認められ、家族や友人からも慕われる〜僕が魔法少女になった理由(わけ)〜
第36話 なんか安心するんだよね。だから、今日はありがとう
第36話 なんか安心するんだよね。だから、今日はありがとう
イベントの準備がひと段落してから数日後の放課後。教室で雑談をしていると、ふとしたきっかけで佐藤さんが口を開いた。
「ねえ、みんなでどこか遊びに行かない?」
その一言に、教室が一気に賑やかになる。最初は数人で話していたはずが、いつの間にかクラスの半分近くがその話題に加わっていた。
「遊びに行くなら、どこがいいかな?映画とか?」
「いやいや、映画だと会話できないし、ボウリングとかの方が良くない?」
「それよりもカラオケとか?全員で行けるし!」
色々な意見が飛び交う中、田中が目を輝かせながら僕に向かって言った。
「おい山田、お前も行くだろ?」
「え?ああ、まぁ、みんなが行くなら……。」
返事をすると、田中は満足そうに頷いた。その様子を見ていた女子たちも笑顔を見せる。
「山田くんも来るなら絶対楽しいよね!」
「だよね!なんか頼れる感じだし!」
そんな言葉に、僕は思わず少し照れくさくなる。まさか自分が誘われる理由になるとは思っていなかった。
「いやいや、僕なんかいても特に変わらないって。」
「そんなことないよ!山田くんがいると、みんな安心するっていうか、場がまとまる感じがするんだよね。」
佐藤さんの言葉に、周りの何人かも頷いている。それが本音かどうかは分からないけど、嫌な気分ではなかった。
*
遊びに行く話が決まり、SNSのグループが作られることになった。自然な流れで、僕もそのグループに招待された。
「山田くん、MINE交換していい?」
佐藤さんがスマホを差し出してくる。それをきっかけに、他の女子たちからも同じように声をかけられた。
「えっと……もちろん、いいけど。」
「やった!じゃあ、これで決まりだね!」
こうして、僕の連絡先は急激に増えることになった。これまで、あまりこういった交流がなかっただけに、少し新鮮だった。
*
その週末、僕たちはクラスの男女混合でボウリングに行くことになった。現地に集まると、みんな楽しそうな顔をしている。
「山田くん、久しぶりに来たの?」
「いや、ボウリング自体あんまり経験ないんだよね。」
「じゃあ、一緒にやろう!ルールは簡単だし、すぐ慣れるよ!」
そんな会話をしながらゲームが始まる。最初はぎこちなかったけど、次第にみんなで笑い合いながら楽しむようになった。
「山田、マジでセンスあるじゃん!」
「さすがにそれは言い過ぎだろ。でも、ありがとう。」
男子たちと盛り上がる中、女子たちも楽しそうに会話に加わってくる。なんだか、今までにないくらい自然に場に溶け込めている気がした。
*
帰り道、佐藤さんがふと話しかけてきた。
「今日、すごく楽しかったね。」
「そうだね。みんなのおかげで楽しい時間を過ごせたよ。」
「でもね、実はみんな、山田くんが来るから遊びたいって言ってたんだよ。」
「えっ……僕が?」
突然の言葉に驚くと、佐藤さんは少し照れくさそうに笑った。
「だって、山田くんがいると場がまとまるし、なんか安心するんだよね。だから、今日はありがとう。」
その言葉に、僕は少しだけ胸が熱くなった。自分の存在が誰かの役に立っている――それを実感できた瞬間だった。
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