第12話 マジかよ…
授業が終わると同時に、僕は教室を出た。他のクラスメイトは部活に向かったり、友達と遊びに行ったりしている。田中もサッカー部の練習があると言って、いつものように明るい声で手を振りながら去っていった。僕も誘われたけど、正直、そんな気分にはなれない。
「目立たず、普通に生きる。それが一番だ…」
昨日の出来事を思い出すたびに、胸の奥がざわつく。ペンダントを握りしめて怪物を倒した瞬間の感覚、そして自分の姿が美少女に変わったあの衝撃。今でも信じられない。でも、わかっていることが一つある。
「これ以上、あんなことに関わりたくない…」
僕は拳を軽く握りしめ、そう決意した。あの力がどれほど強大で役に立つものであっても、それを使うことで普通の生活が壊れるのはゴメンだ。誰にも知られないように、このペンダントのことも秘密にして、平穏を取り戻そう。
*
放課後、僕は学校を出て、街をぶらぶら歩いていた。特に目的があるわけでもない。ただ、家に帰るのも気が重いし、かといって友達と遊ぶ気力も湧かない。少しでも頭を冷やしたかった。
街はいつも通り賑やかだ。商店街では買い物客が行き交い、近くの公園では子供たちが遊んでいる。僕は人混みを避けながら、静かな道を選んで歩いていく。
「…ん?」
歩いているうちに、ポケットの中で何かがかすかに動く感覚がした。手を突っ込んでみると、ペンダントが微かに震えている。
「これ…昨日の?」
ペンダントはただのアクセサリーのように見えるけど、確かにあの時光を放ち、僕をあの姿に変えたものだ。普段は静かで、何の変哲もないアイテムのはずなのに、今は何かを訴えかけるように震えている。
「なんだよ…どうしたってんだ…」
周囲を見回したけど、特に変わった様子はない。ただの静かな路地だ。ペンダントを握りしめた瞬間、今度はかすかな熱を感じた。少しずつ温度が上がってきている。
「これ…どういうことだ?」
僕はなんとなく、ペンダントが何かを示しているのではないかと思った。試しに少し別の方向に進んでみたけど、震えも熱も弱くなる。元の道に戻ると、再び振動が強まり、温度も上がる。
「まさか…これ、何かに反応してるのか?」
嫌な予感がした。昨日の出来事を考えれば、このペンダントが異常な状況に反応している可能性は十分にある。でも、わざわざその原因を確かめに行くのは危険すぎる。
「いや、やめとこう…これ以上、深入りするのはまずい。」
僕は足を止めた。目立たずに普通に生きる、それが自分の決めた道だ。昨日の戦いも、あれは偶然だったからやれただけで、もう二度と同じことを繰り返したくない。
でも――ペンダントは、まるで「進め」と言わんばかりに震えている。熱さも増してきて、もはや無視できないほどだ。
「…なんで、俺なんだよ。」
文句を言いながらも、結局足が自然と動き出していた。このまま何もしなければ、もっと悪いことが起こるのではないかという気がしてならない。それに、ペンダントが示しているのは、自分にしかわからない道だ。他の誰かに頼るわけにもいかない。
ペンダントが震えを増すにつれて、周囲の空気が少しずつ変わっていくのを感じた。静かな路地だったはずが、どこか冷たい風が吹き抜け、音が消えていく。僕の心臓は自然と早鐘を打ち始めていた。
「これ…またかよ…」
思わず足を止め、ポケットの中のペンダントを強く握りしめた。その時、遠くから低い唸り声のようなものが聞こえてきた。背筋が凍りつく。
間違いない。昨日と同じような状況だ。
「マジかよ…」
いや、逃げるべきだ。関わらない方がいいに決まってる。でも、足が震えて動かない。ペンダントがさらに強い熱を発し、振動がピークに達した瞬間、遠くに黒い影が見えた。
怪物だ。
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