第11話 あの辺で見たんだよな…すっげー綺麗な女の子

翌朝、目覚ましの音で目が覚めた。昨日の疲れが全然取れていないのがわかる。全身がだるくて布団から出るのがつらいけど、遅刻したらまた担任に小言を言われるのは間違いない。仕方なく体を起こして、頭をぼんやりさせながら制服に着替えた。


「昨日のあれ…夢じゃないよな…?」


まだ頭がはっきりしない状態で、昨日の出来事が頭をよぎる。謎のペンダント、黒い怪物、そして自分が美少女に変身して拳で怪物を倒したこと…。現実味が薄いけど、手に握ったペンダントはまだポケットの中にある。


とりあえずスマホを手に取り、ベッドに座りながら検索を始める。「怪物 出現」「黒い影」「街中 異常現象」――いろんなワードを試したけど、それらしい情報は何も出てこない。SNSやニュースサイトにも特に異常な報告はなく、普段通りの話題ばかりだ。


「おかしいだろ…あんなことがあって誰も気づいてないなんて…」


疑問が膨らむ一方で、これ以上調べても何も出てこないのは明らかだった。仕方なくスマホを放り出し、カバンを背負って家を出る。朝の空気は少し冷たくて、昨日の非日常的な出来事と対照的にやけに平和に感じる。


学校に着くと、いつも通りの光景が広がっていた。教室では友達が騒いでいて、黒板には先生が書いた謎の落書きが残っている。椅子に座り、ぼんやりと周囲を眺めていると、田中がいつものようにこちらに近づいてきた。


「おう、陸。昨日の帰り、なんか変なことなかったか?」


田中は椅子を引き寄せて隣に座り、興味津々な顔で話しかけてきた。その問いに、一瞬、心臓がドキッとする。


「変なことって…なんで?」


「いや、なんかさ…俺さ、昨日の帰り道、変な気配感じたんだよ。周りがやけに静かだったっていうか…なんか不気味だったんだよな。」


田中の話を聞いて、昨日のあの空間を思い出した。あれは確かに普通じゃない。けど、今のところ僕が知っているのはそれだけだ。


「そ、そうか…俺は別に何もなかったけど?」


田中がじっとこちらを見つめてくる。嘘がバレないように平静を装うのが精一杯だった。


「でもさ、変な話だけど、あの辺で見たんだよな…すっげー綺麗な女の子。髪が長くて、なんかキラキラしてる感じの…」


「えっ…!?」


思わず変な声が出た。田中が言っているのは、間違いなく昨日の僕――いや、美少女に変身した時の僕だ。


「なんだよ、その反応。陸も見たのか?」


「いや、別に…ただ、そんな子がいたのかって思っただけ。」


田中は不思議そうな顔をしながら「まぁ、あれも夢か何かだったのかもな」と呟いて席を離れた。僕は胸を押さえながら深く息を吐く。危なかった…。でも、田中があれを見ていたなら、完全に無関係ではいられないかもしれない。


授業が始まり、田中との会話の続きをする機会はなくなったけど、頭の中では昨日の出来事がぐるぐると巡っていた。ペンダント、怪物、そして美少女の姿になった自分――全てが謎のままだ。

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