第2話 英雄
「英雄さ」
隼斗は微笑しながらシンにそう伝えた。シンは戸惑いから隼斗のことを凝視してしまう。隼斗は腰に刀を帯剣している以外は、ただの休日の少年だった。シンが目線を上げていくと隼斗の目線と重なる。
「先に治療だな」
隼斗はシンの前に手をかざす。すると、シンを優しい光が包み込み傷ついた体を一瞬で治してしまった。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
隼斗は会釈をすると魔人の方に向き直った。そして、結界に魔力を追加で送り魔人を弾き飛ばす。
魔人はすぐに体勢を立て直して睨みつける。
「オマエハダレダ」
その言葉にはもう知性を感じることはできなった。隼斗は憐れみのような目を魔人に向けた。
「知らなくていいよ」
隼斗は手刀の形をとった右手を横一線に左から右へと動かした。
「すぐ終わるからさ」
「なっ、」
シンの目に映ったのはすでに胴と頭が繋がっていない魔人の姿。そして、魔人だった体はゆっくりと地面へと突っ伏した。隼斗は魔人から魔力反応が無くなったのを確認したのち、ゆっくりとシンの方へと近づいてきた。
「初めまして勇者様」
「は?」
シンから間抜けな声が漏れる。当たり前だった勇者とは伝説上の人物。過去に現れた魔王を倒し、一時的にこの世界に平和をもたらした人物なのだから。
(何を言っているんだこの人は)
「そうか、自覚はないのか」
隼斗は何かを察したように一言そう呟いた。それから、左手を口元へと当て考える素振りを見せる。
少し間が空いてから隼斗が口を開く。
「まぁとりあえず行こうか」
パチッ
隼斗が指を鳴らすと景色が一転した。いや、これは比喩だ。正確にはどこか違う場所にきたと言うのが正しいだろう。
「転移魔術!」
「ご名答」
先ほどまでは、イギリスにいた2人はいつのまにか全く違うまるで近代世界のような場所へと移動した。
「ようこそ!魔術天空都市アルカディアへ」
隼斗は腕を全開に広げて歓迎の意を示す。シンはいまだにこの景色に呆然としてしまい、そんな隼斗を無視してしまう。隼斗はパッと切り替えて
「まぁ、とりあえず向かおうか」
「どこにですか」
シンは慌てた様子で食い気味で隼斗に尋ねる。隼斗は少し驚いた様子になった後、すぐに微笑し
「魔術アカデミアさ。そこで君を待っている人たちがいる。まずはその人達に会ってもらおうとおもう」
「いや説明はないんですか。何で連れてこられたとか。てか、僕が勇者って何ですか。どう言うことですか」
慌てすぎて質問が一切まとまってないシンを少し笑いながら隼斗は答える。
「ハハッ、まぁとりあえず会ってくれ。今の質問はそいつらが答えてくれるさ。俺はシンプルに説明するのがめんどくさい」
「えぇー、何ですかめんどくさいって勝手に連れてきたんだから答えてくださいよ。」
歩き出した隼斗の後ろを呆れながらシンはついていく。
「後、俺たち同い年だから敬語はやめてくれ。変な感じがする。」
「はぁー、僕たち同い年なの?!」
シンは驚いた表情になった後すぐに呆れた表情に戻った。それは驚き疲れたと言わんばかりであった。
「オマエほんと変なやつだな。俺のことほんまに知らないのな。」
隼斗はそう言って笑いながら魔術アカデミアへの道をシンと共にあるいていくのであった。
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