第7話 果てなき欲望


 催眠術の効果だろうか、あるいは私のペイズリー柄に見せかけたゾウリムシ柄の可愛いブラに魅了されたのだろうか、チトマス先生の興奮レベルは、留まる所を知らず爆発寸前。

 好きな人にまじまじと裸を見られる恥ずかしさに、思わず両手で顔を覆う。


「ふふ、意外とウブで可愛らしいじゃないか。お前に夢中になってしまいそうだ」


 先生の暖かな右手が、みぞおちの辺りに触れられる。その瞬間ビクッと体が反応してしまった。

 てっきりブラの中に手を潜り込ませ、膨らみを堪能した後、中指と薬指の間でトップをそっと挟まれるかも……と思っていたが、ただの妄想だった。


「いつも腹の調子が悪そうだが、今日は大丈夫なのか?」


 ネイルの手入れが行き届いたスベスベの手が、パン生地を丸めるように私のヘソ上を大きく円運動する。そのあまりの気持ちよさに、思わず身じろぎして吐息が漏れてしまう。


「ちゅ~か……お前、何で下まで脱いでんだ?」


 いつの間にか、ワンアクションの神業で、下のスカートとパンストが半分脱げてしまった。


「これは……お仕置きする必要がありそうだな……」


 凌辱欲を刺激された先生の指先が、徐々に蠢きながらヘソ下まで伸びてくる。このまま無抵抗で身を委ねると、汗ばんだその先には……。目を閉じたまま、思わず口籠もってしまう。


「だッ大の方を開いて、小の方を目指す……つもりですか?」


「何、訳の分からない事を言ってんだ……よ!」


 下腹部のぜい肉が、思いっきり掴まれ、柔い脂肪組織が餅のように捻られた。


「い、痛たたたあああッ!」


「何なんだ、この下っ腹の肉は? 身も心も弛みまくっとる! この変態女子めがあああっ!」


 続けてブラとショーツの間の脇腹を、思いっきりくすぐられまくった。


「あひゃ! いひぃ! うひゃひゃひゃひゃあああっ!」


 とうとう転がって、ベッドの下に裸で落下してしまう。心に巣食うエロモードが崩れ去ってゆく。


「先生……ひょっとして?」


「私に催眠術など十年早いわ!」


「いつから正気に戻ったんですか?」


「バ~カ、最初から掛かってなかったよ。もちろん後は全部演技さ。自分で言うのも何だが、女優並みだったろ?」


「ひどい! 純情で無垢な体を弄んだのね!」


「はめようとしたのは、どっちだよ!」




 こうして私の用意周到な計画は、鋭いチトマス先生によって見破られ、志半ばで頓挫してしまったのだ。

 無慈悲な先生は、二度と悪だくみできないようなキツイお灸を私に据えた後、何事もなかったかのように服装を正し、颯爽と保健室から立ち去っていったのだ。


 いつか……いつかきっとリベンジしてやりますとも。

 それにしてもミスター珍め、しくじりおって……もう許さん。私の傑作フィギュアは、渡さないんだから!



  【おしまい】

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シン・変態女子アマクリン 印朱 凜 @meizin39

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