第3話 文化祭開幕
不穏な空気を吹き飛ばすほどの、熱気に満ちた歓声が広がる校内。今日は
普段とは違う華やかな飾り付けが目立つ教室や廊下には、招待された一般人の姿が見受けられる。
「さあ、今年はどの娘が選ばれるのか~!
窓の外から聞こえてくるナレーションの声に、教室のローレンス委員長こと、ヤリ手店長が眼鏡を拭きながら舌打ちする。
「うむむ……父兄の多くがグラウンドに流れてゆく。我々の客を奪われてしまう。皆、これからが正念場だ。がんばっていこう!」
「おお~っ!」
3年B組の教室には手もみマッサージ店よろしく、施行台が10基ほど並べられている。露出度の高い白衣に着替えたのは、茶色のポニーテール娘バンガーターと天然金髪娘ヘス。相槌を打つと、教室を飛び出して客引きに向かう。クラスでも指折りのグラマラスなコンビだ。
「ちょっとそこのお兄さん、ウチでリラックスしていかな~い?」
ヘスが廊下を歩いていた頭の薄い、昔モテていた風の顔をテカらせたオッサンに声をかけた。自転車で来ているらしく、ロードバイクウェアの上下だったが腹が出ている。
「リラクゼーション本舗『みらくる』か……。ちょうど足腰が疲れてたんで、やって貰おうかなぁ……」
現役女子学生による手もみマッサージの看板に、鼻の下を伸ばしたオッサンが、両脇をバンガーターとヘスに、やんわりと組まれた。
「おいおい、こりゃ両手に花だな。この距離感にオジサン、戸惑っちゃうよ~」
「まあ、中に入れば、もっと嬉しいサービスが待ってますよ~」
バンガーターの白衣からチラチラ見える胸の谷間に目が釘付けとなったオッサンは、教室に入った瞬間、腕組みした白衣姿のハラダと目が合った。
『メスゴリラ……』という言葉を何とか飲み込んだオッサンは、あっと言う間に施行台のマットに組み伏せられると、台に開けられた穴から顔を出すものの、息ができない。元レスリング部員だったハラダが、オッサンの背中に馬乗りとなっていたからだ。
「宜しくお願いします、お客さん。今日はどういった部位のマッサージをご希望で?」
重いお尻の彼女が、精一杯のカワイイ声で訊いてくる。
「イ、イデデ……っこ、腰……」
「腰ですね、承知致しました~」
次の瞬間、人間離れしたハラダの握力で、骨折ギリギリ・マッサージの連続技が開始された。
その頃、教室外で断末魔のような悲鳴を聞いた白衣姿の私は、アマクリンと書かれた名札をプラプラさせながら、ついにターゲットを発見したのだ。
「チトマス先生! ずっと探してました~! 人の少ない今が、チャンスなんですよ~」
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