第11話 生理学教室

 私は、「マナミ」の女性ホルモンに反応して光る性質が「樹」に遺伝したことを知り、遺伝と生態学に詳しい生理学教室の女性の教授である亀田先生を訪ねた。

 亀田先生には、「樹」の母猫だった「マナミ」が光るメダカを食べたことを正直に話した。

 

 先生は私に、

「そもそも『光るメダカ』って、何と何を掛け合わせたの?」

 と聞いた。

 

「掛け合わせたのではなく、遺伝子操作をしたのです」

 私がそう言うと、

「同じようなものじゃない」

 と先生は言った。


「もともとの光るメダカは、ミナミメダカの遺伝子にイソギンチャクモドキの赤い色素を含む遺伝子を組み込んだのが始まりです」

 私がそう言うと、先生は、


「メダカとイソギンチャクだって!」

 と言った。私が、

「モドキです」

 と言うと、


「モドキもカブキもないでしょう。そんな、まったく違う種を掛け合わせるなんて、いったい何を考えているの!」

 と、先生は言った。


「「アキタコマチ」の遺伝子を「タイ米」の耐暑性をつかさどる遺伝子で修飾して、暑い地方でも育つ美味しいお米を作るのは同じ種同士だからOKよ。でも、虎とサメを掛け合わせたら、バイオハザードに出てくる怪物になるじゃない」

 亀田先生は、私たちがやっていたことはバイオハザードに出てくる生物を作っていたと言いたげであった。


「いくらたくさん食べたとはいえ、遺伝子細胞にまで影響を及ぼすなんて、やっぱりバイオハザードの世界だね」

 

 先生はそう言うと、教授室に可愛い女の子を招き入れた。


 そして先生は、

「このが「樹」ちゃんの検査に協力してくれるから、「樹」ちゃんを1か月半ほど預からせてね」

 と言った。


「一か月以上もですか・・・」

 私がそういうと、亀田先生は、


「化け猫を作ったのだから、それくらい、我慢しなさい」

 と言った。

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