第6話 「マナミ」はどこに?
私の部屋には、床から5センチくらいの高さまで水がたまっていた。
それは、壊れた水槽の中にあった水と上の階の漏水が一緒になったものであった。
しかし、床にたまった水の中に、メダカは一匹もいなかった。
私の水槽の中にいた光るメダカは、自然繁殖により百匹くらいになっていた。
それが一匹もいないとは、どういうことだ?
最も可能性が高いのは、マナミが食べたということであった。
「同じ部屋に住んでいるのだから、メダカを食べちゃいけないよ」
と、私がマナミに語りかけても、相手は猫なので、マナミがそれを理解することはできない。
私が帰宅しなかったため、お腹をすかしたマナミが光るメダカを食べたことは、容易に推察できた。
しかしながら、マナミ自身も、私のアパートにいなかったのである。
窓に開けた扉は、マナミが用を足したり、お散歩に行ったりするために付けたもので、これまでマナミが帰宅しなかったことは、一日たりともなかった。
私は、二、三日様子をみたが、マナミは帰宅しなかった。
(恋人や奥さんが家を出て行ったら、こんな気持ちになるのだろうな)
という気持を味わった私は、人探しならぬ「猫探し」のポスターを作った。
そして、近隣の公民館の掲示板に、許可をもらって、そのポスターを張った。
休みの日は、隣町まで足をのばして、私はマナミを探し回った。
それでも、マナミの行方は分からなかった。
そして、「光る化け猫」の噂が私に伝わってきた。
私の住んでいる町から10キロほど離れた町から、警察官が私のアパートを訪ねて来たのは、地震から三か月以上経過した日であった。
私を訪ねてきた警察官は、私がその町の公民館の掲示板に張った「猫探し」のポスターを持っていた。
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