第3話 マナミ

 マナミと一緒に暮らし始めて、何年になるだろうか・・・

 

 あれは確か、大学1年の大学祭の帰りだったから、もう4年になる。

 あの夜、冷たい雨が降り始めたので、私が雨宿りするためにアパートの近くの八百屋の軒先に入った時に、私の足に顔をこすりつけてきたのがマナミだった。

 それは、生まれて間もない三毛猫であった。

 三毛猫は基本的にメスだけで、オスの三毛猫は原則としていないというのは、やはり染色体の関係である。


「この頃、こいつが住み着いちゃって困っているのよ。お兄ちゃん、もらってくれない?」

 店を閉めようとしている八百屋のおばさんにそう言われて、

「じゃ、僕がもらいます」

 と言って、僕はその日、小さな三毛猫をアパートに連れて帰った。


 私は、その小さな猫に「マナミ」という名前を付けて、飼うことになった。

 猫の名前を「マナミ」にしたのは、どこかのイラストで見た、めっちゃ可愛い女の子の名前が「Manami」だったからである。

 

 幸い私が住んでいたアパートは、犬はだめでも猫はOKで、私の部屋は1階だったため、猫が出入りする扉も付けることができた。

 それからマナミは、僕の恋人役をしてくれた。

 その日に起こった楽しかったこと、辛かったこと、そのすべてを僕はマナミに語った。

 マナミはいつも可愛い顔をして、僕の話を聞いてくれた。

 マナミの顔を見ていると、年が15、6の、目がぱっちりとした、縦巻きカールがめっちゃ可愛い女子高生のように見えてきたから不思議であった。

 

 盆や正月に帰省する時は、ケージに入れて、僕はマナミを実家に連れて帰った。


 実家にマナミを連れて帰ると、最初の年は妹が、

「まあ、可愛い」

 と言って世話をしてくれたが、マナミは僕の妹になつかなかった。

 と言うよりも、マナミは僕の妹に反抗的だった。その様は、

(マナミはメスだから、僕の妹にやきもちを妬いている)

 としか思えなかった。

 

 そのため妹は、次の年からマナミの世話をしてくれなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る