第3話


 ※※※


 夕暮れ時、空は蜜柑色に揺れている。


 そんな中、私は美羽に呼ばれ、校舎裏の大きな桜の木の下に来ていた。


「美羽、話って?」


「実はね、早月に紹介したい人がいるの」


 そう言うと、美羽は後ろを向いて「和人カズトくん!」と叫んだ。


「……ども」


 恥ずかしそうに現れたのは、私と同じクラスでサッカー部のキャプテンをしている坂本和人だった。


「わたし、和人くんと付き合うことにしたの。早月にだけはちゃんと伝えておこうと思って」

「……そっか、教えてくれてありがと」


 私は、無理矢理作った偽物の笑顔を二人に向けた。


 こうして。


 私の十年以上にわたる初恋は、いとも簡単に散ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る