第十話『2069:再会』
〉〉〉二〇六九年 〉〉〉
元三が、紙に心の内を
それをちょうど待ち伏せしていたかのごとく、美樹仁から、連絡がきた。
連絡手段は、電話だった。
──やぁ、久しぶりだね、元三。噂を聞いて、ちょっと心配になって電話をよこしたんだけど……なんでも、元三の家、あの
美樹仁の声は、
「ああ、実はそうなんだ。まぁ、実害はないから、俺も佳子も、変わりなく過ごしてるよ。警察の捜査も自然消滅しそうなくらいだし……」
元三も、あの頃に戻ったかのように、即時、
「そっか、まぁ元気にやってるなら、よかったよ」
「うん。ところで、そっちはどうなんだ? まだ、物理学の……「時間についての研究」、あれ、やってるのか?」
「ああ、
「親孝行なやつだな、美樹仁は」
「ま、まだ親孝行できるほどの何かを見つけたわけではないから、
「そっか。そうだ、久しぶりに……合わないか?」
元三は、喉奥に、ある程度の引っかかりをもって、そう提案したが……
「もちろん。実は俺も、元三に見せたいものがあってだな……」
美樹仁は、その提案をまるで察知していたかのように、二つ返事である。
「見せたいもの……というと?」
「それは見てからのお楽しみだ。こっちに来れる? 今は郊外に住んでるから、元三の家からはちょっと遠いかもだけど。車で二、三時間かな、いや
「気にするなって。それくらいなんてことないさ。ぜひ、行かせてもらうよ。数年越しに美樹仁が俺に見せたいもの、なんて、すごく気になるしな」
「わかった、なら……
「
「ああ、関係は、あるっちゃあるかな。さすが、勘がいいな、元三は」
「へへへ。美樹仁の考えていることは、今でも手に取るようにわかるよ。難しい科学の話以外は! じゃあ、
「ああ。じゃあまた」
電話は、どちら側から切るかの駆け引きもなく、あっさりと切れた。
直後、
(((((五時間以上
元三は、目当ての建物に到着した。
日は既に、傾き始めている。
やけに質素な五階建てアパート。
元三は、その最上階である五階まで、階段でせっせと上がり、美樹仁に教えてもらった部屋番号のドアのところまで歩いていくのだが……
目的地。
なぜかドアが一面、鏡張りになっている。鏡の左下、
元三は、
声がした。
「鍵は開いているから、入ってきてくれ」と。
歳のせいか、美樹仁の声は、何かが違う。
ドアノブは、汚物を
ドアが開き切っても、目に入るのは、暗い廊下と、その先のさらなるドアのみで、美樹仁の姿はまだ見えない。体を悪くして動けないのだろうか、他に何か理由があって玄関まで迎えに来ないのかは、まだわからない。玄関には、靴の一足もなく、玄関と廊下を
薄暗い。
家具のほとんどないだだっ広い部屋の中央には、向かい合った椅子が二脚。
「美樹、仁?」
元三が声をかけると、男はようやく、顔を上げる。
「やぁ」
男の顔は、なぜか、元三と、
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