第三話『2069:夜襲』
〉〉〉二〇六九年 〉〉〉
——野尻
ある夏の
腰の高さの、
「ねぇ
と妻は、湿った息の塊を、夫の口にあてる。
「なぁに
と夫は、突き合わせていた鼻がペしゃっと潰れるほどに圧をかけ、返事する。
「ずっと言おうと思っていたんだけど……私たち、子供が欲しいと思わない? 年齢的にちょっとギリギリかもだけど、今はいい出産方法も増えてるみたいだし」
「うーん、確かになぁ。子供かぁ…………。あ、男の子だったら、サッカーを教えてやりたいな」
「あ、じゃーあ、女の子だったら……サッカー部のマネージャーね?」
「おいおい、お互い過去の自分を反映させる気満々じゃないか」
「うふふ、そうね。でも、親ってそんなものなのかしらね」
「そうかもなぁ…………。ま、男の子でも女の子でも、
「何よ、こんな歳にもなって、カッコなんかつけちゃって……」
直後、
部屋の中の時は静止する。
しばしの沈黙。
その静けさは、脱ぐものは脱ぎ終わり、
そこで
ドドドドドドドド!
と下品な足音。
音の出所は、近い。
二人は
「何だ、今の音!?」
「まさか、泥棒かしら??」
二人は見つめ合って不安がる。
「ちょっと見てく——」
と、
寝室の入り口、やや立て付けの悪いドアが内側に、
その人相はフードを深く被っているせいではっきりとはわからないが、背丈は
よく見ると、侵入者は、刃物を持っている。その刃物は変わった形の短刀、もっと言えば、恐らく国じゅうの店を回っても手に入らないであろう短刀で、色は七色、燃え盛る炎のような形の刃を備えた未来的なデザインをしている。
切先が、元三に向けられる。
元三は反射的に、枕元にある
闇の到来とほぼ同時に、侵入者は直立不動のまま、ドア横の壁のとある部分に向けて、短刀を持っていない方の腕を伸ばし、その人差し指を、
何も起こらない。
寝室は、
元三も隙を見て負けじと、間接照明器具の傘の部分を、ベッドの枕側が接している壁に叩きつけてその一部をバリンと割ると、鋭くなったガラス質を、侵入者に向ける。
すると、侵入者はあっさりと、一目散に逃げていった。
〈〈〈 第四話『2049:机上論』へ〈〈〈
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