第11話
親のいない俺とトラには、惨めになる日。
この日ばかりは、孤児にもホームレスにも御恵で食べ物が配られる。
「おめでとう、はいどうぞ。女神様のご加護がありますように」
と、薄っぺらい笑顔を張り付けた奴から渡される。
心の底では俺達を蔑みながら、優越感に浸りながら。
まるで自分が女神にでもなったかのように。
それでも食べ物を貰いに行く自分が卑しく浅ましくて……。
女神も大嫌いだが、自分のことも大嫌いになる日。
いっそ滅んでくれた方が良かった。
そう何度思ったことか……。
滅んでくれたらこんなに貧しく苦しい思いをせずにすんだのに。
痛い思いも、世界を憎んだりせずにすんだのに。
それでも、トラに出逢えた。
そして……
ハナに出逢えた。
今は、生きたいと思う。
この二人のために。
この2人と生きていくために。
「感謝する日なら……ハナはレオとトラにする!!」
「「ハナ……」」
「いつも側にいて守ってくれる二人に!!」
「それを言うなら俺もだな」
「トラ……」
ニッコリと微笑んだハナとトラに不覚にも何故か泣きそうになる。
感謝するのは俺の方だ。
お前達が居てくれるから、頑張れるんだーー。
今年は……楽しめるかもな。
働いてるから、少しだけど金もある。
これで、二人に何か買えねぇかな?
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