第10話
「ねぇねぇ、レオ、トラ」
「「ん??」」
泣き止んだハナと教会の椅子に座り、3人でのんびりする。
今、住居の方に帰れば、夕飯の準備でバタバタしているから。
今日は3人とも当番ではないから、飯が出来たら行けばいい。
目と鼻の頭を真っ赤にしたハナが俺とトラを見てくる。
俺はハナの目尻を撫でながら、どうした?と言えば
「最近、教会を可愛くしてるんだけど」
可愛く……?
ああ。
「なんで?」
そう言われて見れば、教会の中が花や飾りで華やかになってる。
忘れていた。
トラと目があう。
もうそんな時期か。
「降誕祭だな」
「こうたん……さい?」
「女神がこの国に降り立った日ー」
「めがみ?」
「昔、この地で戦争があった」
トラが話すのは遥かな遥かな昔話。
俺達も、大人が話してるのを聞いただけで、細かいことはわからない。
「せんそう……?」
「人間同士が殺し合うんだ」
領地、金、物資などを奪い合って。
「この国は負けようとしていた、けど」
「女神が降臨した」
「めがみ…」
そういえば…
俺は正面に祀られている女神像を見る。
それはどこか、ハナに似てる。
なんでだかそう思った。
「そして女神は圧倒的な“力”と“対話”で、この国を勝利へと導いた」
自分達を勝利へと導いた女神に感謝を込めて、降臨したその日を降誕祭として、祝うようになったのだという。
でもそれは裕福な家庭だけの話。
俺もトラも……
女神もこの日も大っ嫌いだった。
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