第5話

3人で並んで屋根の上に座り、暮れてきた空を眺める。



寒くなってきたけど、ギュッとくっついてるから触れあってるところは暖かい。




「アイツら……。ずっとずっとハナのことハナクソって呼ぶんだもん」




レオがつけてくれた大事な名前を。



と、ケンカの理由を話してくれた。



元気がないのは、教会に来て1ヶ月が経ちハナも色々学んだから。



落ち込んでいるのだ。



自分の行いが俺やトラに迷惑がかかるのではないかと……。



今のところ安全な教会を追い出されるのではないか……と。



大丈夫だと、俺はハナの頭を撫でる。



今は俺とトラは働いていて教会にきちんと金を入れている。



万年金欠のこの教会が稼ぎのある俺達を追い出すはずがない。



まぁそのせいで……ハナを一人に……寂しい思いをさせてるけど。




「子供同士のただのケンカだ。追い出されたりはしねぇよ」



「本当?」



「ああ」




不安げに見上げてくる黄金の瞳にしっかり頷く。


夕日に照らされたその瞳は不思議な色になり輝いて見える。


そうなると同じ色の俺の瞳もこんな風に見えるのか?



不思議だ。




「まぁ、ババアの説教はしっかりあると思うが」



「うぇえ……」




ハナが盛大に顔をしかめる。



ついでにハナの横でトラもしかめてる。



……ババアの説教は長いからな。



それにトラは




「ククッ。もうハナクソって呼ばれることもねぇだろ」



「どうして?」




さっきのことを思い出す、トラも説教は確実だ。




「トラが奴らに渾身の一撃をくらわしたからな」



「トラが……?」



「蹴ってやった」



「トラッ!!」



「うわぁっ!?」




ハナがトラの首にしがみつく。



この件でハナには強力な守護者がいることが知れたし、トラの後ろには更に俺がいるから

な。




「ごめんね、ハナ。一人にして……」





トラがハナの頭を撫でながら言う。




「んーん。大丈夫。レオとトラと一緒に居れるならハナ、我慢出来るよ!!」



「偉いな、ハナ」




そう言ってやると、名の通り花のように可愛らしく笑った。



アイツらは……ハナと遊びたかったのかもな。



俺とトラにしか心許さず話さないハナと。



なにしろハナは可愛いからな!!




「もうそれは親バカだよ、レオ」



「上等」




呆れて言うトラに笑えば、ハナが今度は俺の首にしがみついてくる。




俺の大事な家族。


お前らのためなら俺はなんにだってなるよ。

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